「じゃあ……簡単楽ちん大爆笑! アレをするだけで、今日からあなたも魔法使い! リコリスちゃんの魔法教育を始めるわ」
「なんか、怪しい商品を販売しているみたいだね……」
「そこ、うるさいわよ!」
リコリスに睨まれてしまう。
「というわけで、さっそく魔法を使ってみましょう」
即座に気持ちを切り替えた様子で、リコリスが明るく言う。
そんな彼女の言葉に疑問を挟んだのは、ソフィアだ。
「さっそく、と言いますが、そんなに簡単に使えるものなのですか?」
「使えるわよ」
僕も同じような疑問を抱いたのだけど、リコリスはあっさりと言う。
「魔法って、そんなに難しいものじゃないのよ。そこそこの魔力があって、詠唱を間違えなければ普通に発動するの」
「そうなのですか? 私は剣一筋だったため、詳しいことは知りませんでした」
「ま、簡単な魔法に限るけどね。難しい魔法になると、色々と制御が必要になってくるから大変なんだけど……簡単な初心者用の魔法なら、なんだったらソフィアでも発動できると思うわ」
「なるほど」
リコリスの話を聞いて、ソフィアの目がキラリと輝いた。
「ソフィア、ダメだからね? 今は、アイシャのための練習なんだからね?」
「わ、わかっていますよ」
すまし顔を作るのだけど……
本当は心揺れているんだろうなあ。
ちょっとかわいそうだけど、でも、今はアイシャを優先しなければ。
「というわけで……アイシャ、まずはこう、手の平に魔力を集めてみて?」
「えっと……?」
「目を閉じて、自分の体の中に意識を向けるの。体温とかそういうのとは別に、なにか温かいものを感じるはずよ」
「ん」
言われた通り、アイシャは目を閉じた。
そのまま集中して……
「……あ」
リコリスが言う温かいものを見つけることができたらしく、目を開けて小さな声をあげた。
「見つけた? それが魔力よ」
「これが……」
「それを手の平に集めるの。実際に手で動かすことはできないから、ここは、そういうイメージをすることが大事ね。頭の中で、よこらせっと魔力を運んでいくのよ」
「うん、やってみる」
アイシャは再び目を閉じて集中する。
ふわっと、なにか温かい波のようなものを感じた。
もしかして、今のはアイシャの魔力なんだろうか?
「フェイト、今……」
「う、うん。僕も感じたよ」
「それはアイシャの魔力ね。たくさん魔力を持っていると、他の人も感じることがあるらしいわ」
「へぇ」
魔法に限って、リコリスは物知りだ。
ちょっと失礼な感想を抱いていると、
「魔法に限り、リコリスは博識ですね」
ソフィアが同じことを口にしてしまう。
「……それ、他のことはダメダメ、っていう風に聞こえるんだけど?」
「すみません、つい本音が」
「謝らないでよ! なんかこう、余計にムカつくわ!」
そんなことをしている間に、アイシャは手の平に魔力を集めることに成功した。
その手の平は、柔らかに輝いている。
僕らでも見えるくらい、濃密な魔力が形成されているんだろう。
「あとは、詠唱をするだけね。熟練者になれば、初心者用の魔法は詠唱なしでもいけるんだけど、アイシャは初心者だからきちんと詠唱すること」
「うん、がんばる」
「じゃあ、あたしに続いて言ってみて」
「はい」
「光の精霊よ、ここに顕現せよ」
「光の精霊よ、ここに顕現せよ」
「汝の力は、深き暗黒を切り払う希望なり」
「汝の力は、深き暗黒を切り払う希望なり」
「優しい輝きを今ここに……ライト」
「優しい輝きを今ここに……ライト」
瞬間、世界が白に染まる。
「うわっ!?」
「きゃっ!?」
間近に太陽が出現したかのようだ。
熱はないけど、でも、とんでもない量の光があふれる。
目を開けていることなんてできなくて、すぐに閉じた。
それでも眩しいくらいで、目が痛い。
「ぎゃー!? 目がー! 目がー!」
強烈な光を直視したらしく、リコリスの悲鳴が聞こえてきた。
見えないんだけど……たぶん、空中で転げ回っていると思う。
ややあって光が収まり、目を開けることができた。
「あうー……おかーさん、おとーさん」
アイシャも相当に辛かったらしく、泣きそうな顔でソフィアに抱きついた。
抱きつくとしたら母親。
ちょっと寂しい……
「アイシャちゃん、大丈夫ですか? 目、痛くありませんか? 私達のこと、ちゃんと見えますか?」
「うん、大丈夫……でも、ちょっと痛い……」
「えっと……うん。見た限りは問題なさそうですね。強烈な光を見たせいで、ちょっと混乱しているのかと。ただ、念の為に目薬を差しておきましょう。持っているので」
「はう……」
アイシャのことはソフィアに任せておけば問題ないだろう。
「ぎゃー!? ぎゃー!? あたしの目がー! 目がー!」
「リコリス、大丈夫?」
「大丈夫じゃないわよ! めっちゃくちゃ目が痛いわ! あたしの宝石のように綺麗でかわいい目、ちゃんとある?」
「痛いとか言うわりに、元気だよね……大丈夫。おかしなことになってはいないよ」
「はあ、よかったわ。かわいいリコリスちゃんになにかあったら、世界の損失だもの」
本気でそこまで言うことができるリコリスは、相当な大物だと思う。
「今のはどういうこと? 確か、ライトって小さな明かりを灯すだけの魔法だよね?」
「ええ、そうね。そのはずなんだけど……どうも、アイシャの魔力量が桁違いなせいか、制御に失敗したみたい。それで、あんなに強烈なものになった、っていうわけ」
「それは……」
アイシャの魔力量は相当なものと聞いていたけど……
まさか、ここまでなんて思っていなかった。
きちんと練習しないと、とんでもないことになりそうだ。
「なんか、怪しい商品を販売しているみたいだね……」
「そこ、うるさいわよ!」
リコリスに睨まれてしまう。
「というわけで、さっそく魔法を使ってみましょう」
即座に気持ちを切り替えた様子で、リコリスが明るく言う。
そんな彼女の言葉に疑問を挟んだのは、ソフィアだ。
「さっそく、と言いますが、そんなに簡単に使えるものなのですか?」
「使えるわよ」
僕も同じような疑問を抱いたのだけど、リコリスはあっさりと言う。
「魔法って、そんなに難しいものじゃないのよ。そこそこの魔力があって、詠唱を間違えなければ普通に発動するの」
「そうなのですか? 私は剣一筋だったため、詳しいことは知りませんでした」
「ま、簡単な魔法に限るけどね。難しい魔法になると、色々と制御が必要になってくるから大変なんだけど……簡単な初心者用の魔法なら、なんだったらソフィアでも発動できると思うわ」
「なるほど」
リコリスの話を聞いて、ソフィアの目がキラリと輝いた。
「ソフィア、ダメだからね? 今は、アイシャのための練習なんだからね?」
「わ、わかっていますよ」
すまし顔を作るのだけど……
本当は心揺れているんだろうなあ。
ちょっとかわいそうだけど、でも、今はアイシャを優先しなければ。
「というわけで……アイシャ、まずはこう、手の平に魔力を集めてみて?」
「えっと……?」
「目を閉じて、自分の体の中に意識を向けるの。体温とかそういうのとは別に、なにか温かいものを感じるはずよ」
「ん」
言われた通り、アイシャは目を閉じた。
そのまま集中して……
「……あ」
リコリスが言う温かいものを見つけることができたらしく、目を開けて小さな声をあげた。
「見つけた? それが魔力よ」
「これが……」
「それを手の平に集めるの。実際に手で動かすことはできないから、ここは、そういうイメージをすることが大事ね。頭の中で、よこらせっと魔力を運んでいくのよ」
「うん、やってみる」
アイシャは再び目を閉じて集中する。
ふわっと、なにか温かい波のようなものを感じた。
もしかして、今のはアイシャの魔力なんだろうか?
「フェイト、今……」
「う、うん。僕も感じたよ」
「それはアイシャの魔力ね。たくさん魔力を持っていると、他の人も感じることがあるらしいわ」
「へぇ」
魔法に限って、リコリスは物知りだ。
ちょっと失礼な感想を抱いていると、
「魔法に限り、リコリスは博識ですね」
ソフィアが同じことを口にしてしまう。
「……それ、他のことはダメダメ、っていう風に聞こえるんだけど?」
「すみません、つい本音が」
「謝らないでよ! なんかこう、余計にムカつくわ!」
そんなことをしている間に、アイシャは手の平に魔力を集めることに成功した。
その手の平は、柔らかに輝いている。
僕らでも見えるくらい、濃密な魔力が形成されているんだろう。
「あとは、詠唱をするだけね。熟練者になれば、初心者用の魔法は詠唱なしでもいけるんだけど、アイシャは初心者だからきちんと詠唱すること」
「うん、がんばる」
「じゃあ、あたしに続いて言ってみて」
「はい」
「光の精霊よ、ここに顕現せよ」
「光の精霊よ、ここに顕現せよ」
「汝の力は、深き暗黒を切り払う希望なり」
「汝の力は、深き暗黒を切り払う希望なり」
「優しい輝きを今ここに……ライト」
「優しい輝きを今ここに……ライト」
瞬間、世界が白に染まる。
「うわっ!?」
「きゃっ!?」
間近に太陽が出現したかのようだ。
熱はないけど、でも、とんでもない量の光があふれる。
目を開けていることなんてできなくて、すぐに閉じた。
それでも眩しいくらいで、目が痛い。
「ぎゃー!? 目がー! 目がー!」
強烈な光を直視したらしく、リコリスの悲鳴が聞こえてきた。
見えないんだけど……たぶん、空中で転げ回っていると思う。
ややあって光が収まり、目を開けることができた。
「あうー……おかーさん、おとーさん」
アイシャも相当に辛かったらしく、泣きそうな顔でソフィアに抱きついた。
抱きつくとしたら母親。
ちょっと寂しい……
「アイシャちゃん、大丈夫ですか? 目、痛くありませんか? 私達のこと、ちゃんと見えますか?」
「うん、大丈夫……でも、ちょっと痛い……」
「えっと……うん。見た限りは問題なさそうですね。強烈な光を見たせいで、ちょっと混乱しているのかと。ただ、念の為に目薬を差しておきましょう。持っているので」
「はう……」
アイシャのことはソフィアに任せておけば問題ないだろう。
「ぎゃー!? ぎゃー!? あたしの目がー! 目がー!」
「リコリス、大丈夫?」
「大丈夫じゃないわよ! めっちゃくちゃ目が痛いわ! あたしの宝石のように綺麗でかわいい目、ちゃんとある?」
「痛いとか言うわりに、元気だよね……大丈夫。おかしなことになってはいないよ」
「はあ、よかったわ。かわいいリコリスちゃんになにかあったら、世界の損失だもの」
本気でそこまで言うことができるリコリスは、相当な大物だと思う。
「今のはどういうこと? 確か、ライトって小さな明かりを灯すだけの魔法だよね?」
「ええ、そうね。そのはずなんだけど……どうも、アイシャの魔力量が桁違いなせいか、制御に失敗したみたい。それで、あんなに強烈なものになった、っていうわけ」
「それは……」
アイシャの魔力量は相当なものと聞いていたけど……
まさか、ここまでなんて思っていなかった。
きちんと練習しないと、とんでもないことになりそうだ。