「魂を?」
どういうことだろう?
魂の定義はちょっと曖昧だけど……
でも、確かに存在する。
そのことは、教会や神官などによって証明されている。
ただ、魂を狙う悪人なんて聞いたことがない。
「そもそも魂とはなにか? それは、人を人とするもの。人を構成する上で、一番欠かせないもの。その人の全てといってもいい、心を司るもの。目には見えないけれど、確かに存在するの」
学習院の先生のように、ライラさんは講義を始めた。
話をすることに慣れている様子だ。
研究だけじゃなくて、講義をすることもあるのかな?
「魂については理解しているつもりですが、なぜ、それが狙われるのですか?」
「魂っていうのは、とても強い力を秘めているのよ。人を人たらしめるもの。全ての源。だから、あまり知られていないけど大きな力があるわ」
「魂の力……ですか」
「で、獣人は私達人間より強い魂を持っていると言われているの」
それはなぜか?
獣人の起源については明らかにされていないが……
人間の知識と獣の力を兼ね備えているとされている。
健全な肉体には健全な精神が宿ると言われているように。
強い肉体には強い魂が宿る。
故に、獣人は強く巨大な魂を秘めている。
それがライラさんの説だった。
まだ世間に認められていないものの、彼女としては確信に近いものがあるという。
「数値化するなら……そうね。私達人間の魂が100とするなら、獣人の魂は最低でも1000ね」
「十倍ですか……」
「それはすごいね……」
「だから、強い魂を持つ獣人を狙う、っていう可能性はあると思うの」
ただ、魂をエネルギーとして利用する技術は、まだ確立されていないらしい。
それに、魂を利用することは固く禁じられている。
その話を聞くと、普通ならありえないと思うのだけど……
でも、相手は黎明の同盟。
魔剣という、とんでもない代物を作ってしまう連中だ。
法を守るなんて思えないし……
ライラさんの知識を上回る技術を持っていたとしてもおかしくない。
「うーん……色々とわかったけど、逆に謎が増えた感じだね」
「ですが、前進していることは確かです。焦らず、一つ一つの物事に対処していきましょう」
「うん」
一気に問題が解決するなんて思っていない。
ソフィアが言う通り、ゆっくりと、でも着実に前へ進んでいかないと。
「他にも、獣人に関することを教えていただきたいのですが……」
「もちろん、いいわよ。ただ……」
「ただ?」
「その前に、アイシャちゃんのことを調べさせてもらってもいいかしら?」
「ふぁ?」
じっと成り行きを見守っていたアイシャが、自分に話の矛先が向いて、不思議そうに小首を傾げた。
「あわわ!?」
その拍子に、アイシャの頭の上で寝ていたリコリスが落ちる。
話が退屈で寝ていたらしい。
たまにだけど、リコリスの自由なところがうらやましくなる。
本当にたまにだけどね。
「調べる、っていうのは?」
「えっと……ほら。私は、獣人について誰よりも詳しいって思っているから? だから、どれだけの魔力を持っているのか、っていうのを調べてみたら、さらに情報が得られるかも? ね、ね、そう思わない?」
熱心に語るライラさんだけど……
なんていうか、その目は欲望にまみれていた。
本物の獣人が目の前にいる。
このチャンスを逃したくない。
色々な検査をしてみたい。
そんな考えが透けて見える。
とてもわかりやすい人だ。
「えっと……」
アイシャを見る。
問題ないというように、コクリと頷いた。
「わたし、大丈夫だよ?」
「本当に?」
「うん。おとーさんとおかーさんの役に立ちたいの」
「それは……」
「あと……わたしも、わたしのことを知りたいから」
「そっか……うん。ソフィア」
「はい。アイシャちゃんがこう言うのなら、私も問題はありません」
「おお、マジでいいの!?」
ライラさんはものすごく興奮した様子で喜ぶ。
本当に獣人のことが気になるんだなあ。
「ただし」
釘を刺すような感じで、ソフィアがギロリと睨む。
「痛いことや怖いことは禁止です。そんなこと、アイシャちゃんにさせるわけにはいきませんから」
「うんうん、わかってるって」
「あと、検査の際は私達も同席させてもらいますからね」
「オッケー、問題ないわ」
こうして、アイシャの魔力測定が行われることになった。
さて、どうなるかな?
どういうことだろう?
魂の定義はちょっと曖昧だけど……
でも、確かに存在する。
そのことは、教会や神官などによって証明されている。
ただ、魂を狙う悪人なんて聞いたことがない。
「そもそも魂とはなにか? それは、人を人とするもの。人を構成する上で、一番欠かせないもの。その人の全てといってもいい、心を司るもの。目には見えないけれど、確かに存在するの」
学習院の先生のように、ライラさんは講義を始めた。
話をすることに慣れている様子だ。
研究だけじゃなくて、講義をすることもあるのかな?
「魂については理解しているつもりですが、なぜ、それが狙われるのですか?」
「魂っていうのは、とても強い力を秘めているのよ。人を人たらしめるもの。全ての源。だから、あまり知られていないけど大きな力があるわ」
「魂の力……ですか」
「で、獣人は私達人間より強い魂を持っていると言われているの」
それはなぜか?
獣人の起源については明らかにされていないが……
人間の知識と獣の力を兼ね備えているとされている。
健全な肉体には健全な精神が宿ると言われているように。
強い肉体には強い魂が宿る。
故に、獣人は強く巨大な魂を秘めている。
それがライラさんの説だった。
まだ世間に認められていないものの、彼女としては確信に近いものがあるという。
「数値化するなら……そうね。私達人間の魂が100とするなら、獣人の魂は最低でも1000ね」
「十倍ですか……」
「それはすごいね……」
「だから、強い魂を持つ獣人を狙う、っていう可能性はあると思うの」
ただ、魂をエネルギーとして利用する技術は、まだ確立されていないらしい。
それに、魂を利用することは固く禁じられている。
その話を聞くと、普通ならありえないと思うのだけど……
でも、相手は黎明の同盟。
魔剣という、とんでもない代物を作ってしまう連中だ。
法を守るなんて思えないし……
ライラさんの知識を上回る技術を持っていたとしてもおかしくない。
「うーん……色々とわかったけど、逆に謎が増えた感じだね」
「ですが、前進していることは確かです。焦らず、一つ一つの物事に対処していきましょう」
「うん」
一気に問題が解決するなんて思っていない。
ソフィアが言う通り、ゆっくりと、でも着実に前へ進んでいかないと。
「他にも、獣人に関することを教えていただきたいのですが……」
「もちろん、いいわよ。ただ……」
「ただ?」
「その前に、アイシャちゃんのことを調べさせてもらってもいいかしら?」
「ふぁ?」
じっと成り行きを見守っていたアイシャが、自分に話の矛先が向いて、不思議そうに小首を傾げた。
「あわわ!?」
その拍子に、アイシャの頭の上で寝ていたリコリスが落ちる。
話が退屈で寝ていたらしい。
たまにだけど、リコリスの自由なところがうらやましくなる。
本当にたまにだけどね。
「調べる、っていうのは?」
「えっと……ほら。私は、獣人について誰よりも詳しいって思っているから? だから、どれだけの魔力を持っているのか、っていうのを調べてみたら、さらに情報が得られるかも? ね、ね、そう思わない?」
熱心に語るライラさんだけど……
なんていうか、その目は欲望にまみれていた。
本物の獣人が目の前にいる。
このチャンスを逃したくない。
色々な検査をしてみたい。
そんな考えが透けて見える。
とてもわかりやすい人だ。
「えっと……」
アイシャを見る。
問題ないというように、コクリと頷いた。
「わたし、大丈夫だよ?」
「本当に?」
「うん。おとーさんとおかーさんの役に立ちたいの」
「それは……」
「あと……わたしも、わたしのことを知りたいから」
「そっか……うん。ソフィア」
「はい。アイシャちゃんがこう言うのなら、私も問題はありません」
「おお、マジでいいの!?」
ライラさんはものすごく興奮した様子で喜ぶ。
本当に獣人のことが気になるんだなあ。
「ただし」
釘を刺すような感じで、ソフィアがギロリと睨む。
「痛いことや怖いことは禁止です。そんなこと、アイシャちゃんにさせるわけにはいきませんから」
「うんうん、わかってるって」
「あと、検査の際は私達も同席させてもらいますからね」
「オッケー、問題ないわ」
こうして、アイシャの魔力測定が行われることになった。
さて、どうなるかな?