体をまっすぐにして、水をかいて水を蹴る。
前へ、前へ。
ひたすらに前に。
そして……
「ふぅ」
しばらく泳いだところで、僕は砂浜に戻る。
海から上がり、新鮮な空気をいっぱいに取り込んだ。
「おつかれさまです、フェイト」
「おとーさん、おつかれさま」
ソフィアとアイシャが出迎えてくれた。
僕の泳いているところを見たいと、二人は砂浜で見学をしていたのだ。
リコリスはマイペースにどこかで遊んでいるのだと思う。
「フェイトは泳ぎが上手なのですね」
「うん、それなりに得意だと思うよ。荷物を背負わされて川を渡ったり……あと、水底に沈んでいるお宝を手に入れるため、十分以上、潜水をしたことがあるから。自然と鍛えられたんだ」
「それ、笑えないのですが……」
「あはは」
確かに辛い思いでなのだけど……
でも、その経験があるから、今こうして自由に泳ぐことができる。
過去は過去。
囚われることのないようにして、それを糧として前に歩いていかないとダメだよね。
「ソフィアとアイシャは泳がないの?」
「私は、こうしてのんびりしているだけで十分ですから」
「……」
微笑むソフィアとは正反対に、アイシャは暗い顔をした。
「どうしたの、アイシャ?」
「……わたし、泳げない」
「そうなの?」
「うん。水に浮かばないの……」
泳ぎたいけど、でも、泳ぐことができない。
そんな感じで、アイシャは落ち込んでいるみたいだ。
「なら、僕が泳ぎを教えてあげようか?」
「おとーさんが?」
「うん。今見た通り、僕はそれなりに泳げるから……たぶん、教えることもできると思うよ」
「わたし……泳げるようになるかな?」
「なれるよ。大丈夫、僕が保証するよ」
「……がんばるね」
アイシャは尻尾をぱたぱたさせつつ、にっこりと笑う。
「アイシャちゃん、かわいいです」
「わぷ」
娘の愛らしさにやられたソフィアが、アイシャを後ろから抱きしめた。
「ソフィアも手伝ってほしいんだけど、いい?」
「え? えっと……はい、問題ありませんよ」
あれ?
なんか今、ちょっと様子がおかしかったような……気のせいかな?
「じゃあ、まずは浅瀬に行こうか」
とにかくも練習をしようと、浅瀬に移動した。
ここなら溺れる心配はないし、大きな波が来ることもない。
「アイシャは、水の中で目を開けることはできる?」
「うん、大丈夫」
「え!?」
「ソフィア?」
なぜかソフィアが驚いていた。
さっきから様子がおかしいけど、どうしたんだろう?
「い、いえ。なんでもありません」
「そう? えっと……じゃあ、水に浮くことは?」
「……沈んじゃう」
「そっか、ならそこからだね。ちょっと、やってみてくれるかな? 大丈夫。沈みそうになったら、すぐに僕が助けるから」
「うん」
アイシャは言われるまま、水に浮かぼうとするのだけど……
しかし、すぐに沈んでしまう。
僕はすぐに背中を手で支えて、アイシャを水面に戻す。
「だめだった……」
「落ち込まないで。大丈夫、すぐに浮かぶようになるから」
「そう、なの?」
「うん。人も獣人も、たぶん、変わらないから……うん。基本的に浮かぶようになっているんだよ」
「でも、沈んじゃった……」
「水を怖がっているからなのか、体が曲がっていたからね。まっすぐにして、それでいて力を抜くんだ。ぼーっと、水面で寝るような感じ。そうすれば、基本的に沈むことはないよ」
「なるほど、寝るようにするのですね」
「ソフィア?」
なぜか、ソフィアの方が熱心に説明を聞いていた。
「あ、いえ。なんでもありません」
「えっと……じゃあアイシャ、やってみて?」
ソフィアの様子は気になるものの、今はアイシャが泳げるように色々と教えないと。
アイシャはびくびくとしつつ、言われた通りに体をまっすぐにした。
今度は沈まないように、その背中を僕が支えてあげる。
「ん……」
「ちょっと力みすぎかな? もうちょっと体の力を抜いてみて」
「でも……」
「大丈夫。僕がこうして支えているから。僕を信じて」
「……うん、おとーさんがいれば、安心」
アイシャの表情がリラックスしたものに。
自然と体から力が抜けていき……
ふわっと、アイシャが水面に浮いた。
僕の支えなしに、ゆらゆらと浮かんでいる。
「わぁ」
驚いて、喜ぶアイシャ。
そのせいで沈んでしまうのだけど……
勢いよく水から顔を出す。
その顔はキラキラと輝いていた。
「おとーさん、おかーさん。今、わたし、ぷかぷかって浮いていたよ?」
「うん、そうだね」
「ふふ、やりましたね、アイシャちゃん。こんなにも早く浮くことができるなんて、すごいです」
「えへへ」
僕とソフィアに頭を撫でられて、アイシャはとてもうれしそうに笑った。
尻尾も、ぶんぶんと横に揺れて水面を叩いている。
うん。
僕達の娘、かわいい。
前へ、前へ。
ひたすらに前に。
そして……
「ふぅ」
しばらく泳いだところで、僕は砂浜に戻る。
海から上がり、新鮮な空気をいっぱいに取り込んだ。
「おつかれさまです、フェイト」
「おとーさん、おつかれさま」
ソフィアとアイシャが出迎えてくれた。
僕の泳いているところを見たいと、二人は砂浜で見学をしていたのだ。
リコリスはマイペースにどこかで遊んでいるのだと思う。
「フェイトは泳ぎが上手なのですね」
「うん、それなりに得意だと思うよ。荷物を背負わされて川を渡ったり……あと、水底に沈んでいるお宝を手に入れるため、十分以上、潜水をしたことがあるから。自然と鍛えられたんだ」
「それ、笑えないのですが……」
「あはは」
確かに辛い思いでなのだけど……
でも、その経験があるから、今こうして自由に泳ぐことができる。
過去は過去。
囚われることのないようにして、それを糧として前に歩いていかないとダメだよね。
「ソフィアとアイシャは泳がないの?」
「私は、こうしてのんびりしているだけで十分ですから」
「……」
微笑むソフィアとは正反対に、アイシャは暗い顔をした。
「どうしたの、アイシャ?」
「……わたし、泳げない」
「そうなの?」
「うん。水に浮かばないの……」
泳ぎたいけど、でも、泳ぐことができない。
そんな感じで、アイシャは落ち込んでいるみたいだ。
「なら、僕が泳ぎを教えてあげようか?」
「おとーさんが?」
「うん。今見た通り、僕はそれなりに泳げるから……たぶん、教えることもできると思うよ」
「わたし……泳げるようになるかな?」
「なれるよ。大丈夫、僕が保証するよ」
「……がんばるね」
アイシャは尻尾をぱたぱたさせつつ、にっこりと笑う。
「アイシャちゃん、かわいいです」
「わぷ」
娘の愛らしさにやられたソフィアが、アイシャを後ろから抱きしめた。
「ソフィアも手伝ってほしいんだけど、いい?」
「え? えっと……はい、問題ありませんよ」
あれ?
なんか今、ちょっと様子がおかしかったような……気のせいかな?
「じゃあ、まずは浅瀬に行こうか」
とにかくも練習をしようと、浅瀬に移動した。
ここなら溺れる心配はないし、大きな波が来ることもない。
「アイシャは、水の中で目を開けることはできる?」
「うん、大丈夫」
「え!?」
「ソフィア?」
なぜかソフィアが驚いていた。
さっきから様子がおかしいけど、どうしたんだろう?
「い、いえ。なんでもありません」
「そう? えっと……じゃあ、水に浮くことは?」
「……沈んじゃう」
「そっか、ならそこからだね。ちょっと、やってみてくれるかな? 大丈夫。沈みそうになったら、すぐに僕が助けるから」
「うん」
アイシャは言われるまま、水に浮かぼうとするのだけど……
しかし、すぐに沈んでしまう。
僕はすぐに背中を手で支えて、アイシャを水面に戻す。
「だめだった……」
「落ち込まないで。大丈夫、すぐに浮かぶようになるから」
「そう、なの?」
「うん。人も獣人も、たぶん、変わらないから……うん。基本的に浮かぶようになっているんだよ」
「でも、沈んじゃった……」
「水を怖がっているからなのか、体が曲がっていたからね。まっすぐにして、それでいて力を抜くんだ。ぼーっと、水面で寝るような感じ。そうすれば、基本的に沈むことはないよ」
「なるほど、寝るようにするのですね」
「ソフィア?」
なぜか、ソフィアの方が熱心に説明を聞いていた。
「あ、いえ。なんでもありません」
「えっと……じゃあアイシャ、やってみて?」
ソフィアの様子は気になるものの、今はアイシャが泳げるように色々と教えないと。
アイシャはびくびくとしつつ、言われた通りに体をまっすぐにした。
今度は沈まないように、その背中を僕が支えてあげる。
「ん……」
「ちょっと力みすぎかな? もうちょっと体の力を抜いてみて」
「でも……」
「大丈夫。僕がこうして支えているから。僕を信じて」
「……うん、おとーさんがいれば、安心」
アイシャの表情がリラックスしたものに。
自然と体から力が抜けていき……
ふわっと、アイシャが水面に浮いた。
僕の支えなしに、ゆらゆらと浮かんでいる。
「わぁ」
驚いて、喜ぶアイシャ。
そのせいで沈んでしまうのだけど……
勢いよく水から顔を出す。
その顔はキラキラと輝いていた。
「おとーさん、おかーさん。今、わたし、ぷかぷかって浮いていたよ?」
「うん、そうだね」
「ふふ、やりましたね、アイシャちゃん。こんなにも早く浮くことができるなんて、すごいです」
「えへへ」
僕とソフィアに頭を撫でられて、アイシャはとてもうれしそうに笑った。
尻尾も、ぶんぶんと横に揺れて水面を叩いている。
うん。
僕達の娘、かわいい。