旅の目的がズレて、すっかり観光を楽しんでいるのだけど……
 でも、獣人研究家が戻ってこないことにはどうしようもない。

 それに、色々とあったからか、みんなでゆっくりする時間がなかったし……
 気持ちを切り替えて、ブルーアイランドを楽しむことにした。

 そして夜。

 ごはんを食べて、お風呂に入り……
 そして、アイシャがうつらうつらと眠そうにする。

 そろそろ寝る時間なのだけど……

「……ど、どうしようか?」
「……ど、どうしましょう?」

 ベッドは一つ。
 サイズは大きいから、みんなで一緒に寝ることはできるのだけど……
 でもそれは、ソフィアと一緒に寝るということ。

 そんなことをしていいのだろうか?

 僕とソフィアの想いは同じだけど……
 でも、まだ結婚はしていない。
 それなのに同じベッドで寝るなんて、とても不誠実で破廉恥なことでは?

「えっと……僕、ソファーで寝るね」
「えっ」
「やっぱり、一緒に寝るのはどうかと思うから」
「そ、それは……でも、フェイトにだけそんなことをさせるわけには……」

 なんだろう?
 ソフィアは、どことなく残念そうにしているような……?

 もしかして、一緒に寝たかった?
 いや、まさか。
 ソフィアに限って、そんなえっちなことを考えているわけがない。

「ソフィアって、意外とむっつりなのね」
「な、なにを言うのですか!?」
「ふふーん。フェイトはよくわかってないみたいだけど、このリコリスちゃんをごまかすことはできないわよ」
「くっ……き、斬ります!」
「ちょっ、恥ずかしいからって錯乱しないでよ!?」

 二人はなにをやっているのだろう?

 とにかくも。
 僕はソファーに移動しようとして……

「……おとーさん」

 アイシャに服の端を掴まれて、止められてしまう。

「どうしたの?」
「寝よう……?」
「うん、そうだね。もう遅い時間だから、寝ないといけないね」
「ううん……おとーさんも、一緒」
「えっと……」

 アイシャはみんな一緒がいいみたいだ。

 困った。
 アイシャが願うようにしてあげたいものの、でも、ソフィアと同じベッドで寝てしまうなんて……

「まったく、フェイトもソフィアも考えすぎなのよ。あたしもアイシャも一緒なんだから、あはーんなことはできないでしょ」
「その例えは、ちょっと……」
「ただ一緒に寝るだけ。気にすることはないの。ほら、さっさと寝るわよ」
「ちょ……」

 リコリスにペチペチと叩かれて、ベッドの方へ追いやられてしまう。
 一方のソフィアも、アイシャに手を引かれ、ベッドに。

「……」
「……」

 僕とソフィアはベッドの上で見つめ合い……

「……し、仕方ないから寝ようか」
「……そ、そうですね」

 みんなで一緒に寝ることにした。

 僕、アイシャ、ソフィアの順に並んで……
 そして明かりを消して横になる。
 ちなみに、リコリスはアイシャの胸元に乗っていた。

「……」
「……」

 緊張で眠れない。
 ちらりと横を見ると、ソフィアもまだ起きているみたいだ。

「ね、眠れないね……」
「こうしていると、色々と、い、意識してしまいます……」
「う、うん」
「……」
「……」

 会話が続かない。
 ひたすらに緊張してしまう。

 僕、眠れるのかな……?

「んぅ……」

 すでに半分寝ていたアイシャは、すぐに眠りに落ちたらしい。
 すぅすぅと穏やかな寝息を立てて……
 それから、それぞれの手で僕とソフィアを掴む。

「おとーさん……おかさーん……一緒」

 そんな優しい声。

 それを聞いて、なんだか緊張しているのがバカらしくなってきた。
 リコリスが言うように、なにかするわけじゃないし……
 家族で寝るだけ。
 なら、緊張する必要なんてない。

「ソフィア」
「はい」
「おやすみ」
「ええ、おやすみなさい」

 僕は、そっと目を閉じた。
 今夜は良い夢を見ることができそうだ。