海の街ブルーアイランド。
潮風が吹く街は広く、あちらこちらを水が流れていた。
見ているだけで涼しくなることができて、気持ちいい。
街の奥へ進むと、大きな港。
そして、遊泳場。
港には、大小さまざまな船が停泊していて、遠くから運ばれてきた荷物が降ろされたり、獲れたての魚が運搬されていた。
海の街と言われているだけあって、交易と漁業が栄えているのだろう。
港から少し離れたところに遊泳場が見える。
白い砂浜と澄んだ海。
水着を着て遊んでいる人がたくさんいて、こちらも泳ぎたくなってしまう。
「わぁあああああ」
アイシャが目をキラキラと輝かせていた。
たぶん、海を見るのは初めてなんだろう。
「おとーさん、おかーさん! すごい、水いっぱい!」
「ふふ、そうですね。あれが海ですよ」
「海……おー!」
尻尾がはちきれんばかりにブンブンと横に振られている。
まさか、ここまで楽しそうにするなんて。
ここには、獣人のことを調べるためにやってきたんだけど……
時間があれば、海で遊んでもいいかもしれない。
「しかし、人が多いわねー」
ふわふわと浮くリコリスが、ちょっとげんなりとした様子で言う。
彼女が言う通り、街はたくさんの人であふれかえっていた。
ほとんどが観光客なのだろう。
みんな笑顔を浮かべていて、とても楽しそうだ。
「最近は暑くなってきたから、観光シーズンなのでしょうね」
「露店もたくさんあるね」
「……じゅる……」
露店から流れてくるいい匂いを嗅いで、アイシャがちょっとよだれを垂らしていた。
いつの間に、そんな食いしん坊に……?
「おとーさん、おかーさん」
「えっと……今買い食いをしちゃうと、お昼ごはんが食べられなくなっちゃうから」
「うー……」
お願い、というような感じで、アイシャがじっと見つめてくる。
心が折れてしまいそう。
で、でも、きちんとした教育のために、ここは心を鬼にしないと。
「ダメだよ、アイシャ。買い食いをするなら、ごはんの前じゃなくて後にして……」
「アイシャ、なにを食べたいですか? 一緒に選びましょうか」
「ソフィア!?」
「う……だ、だってアイシャちゃんがかわいすぎるので……ダメです! 私には、こんなアイシャちゃんのお願いを断るなんてできません!」
ダメダメなことを言いつつ、ソフィアがアイシャを抱きしめる。
ともすれば、彼女が娘に甘えているみたいだ。
「あのね……」
「ちょっとソフィア、親がそんなんじゃダメでしょ」
意外というか、リコリスが口を挟んできた。
「親は子供の手本にならないといけないんだから。その親であるあんたが、意味もなく甘やかしてどうするのよ」
「で、ですが、アイシャが食べたいと……」
「確かに、子供のお腹をいっぱいにするのは親の仕事よ。でも、フェイトが言うように、ごはんが食べられなくなったら意味ないでしょ。そういう、きちんとした理由がある時はダメって言うこと。でないと、大人も子供もダメダメになるわよ」
「……申しわけありません」
しゅんと、ソフィアが落ち込んでしまう。
「フェイトもフェイトよ。ソフィアの暴走を許してどうするの?」
「うっ……」
「あんたがしっかりと制御しなさい。フェイト達のためじゃなくて、アイシャのためなのよ」
「ごめんなさい……」
僕も怒られてしまう。
でも、当然のことだと思うので、素直に頭を下げた。
というか……
「リコリスって、けっこう真面目にものを考えているんだね」
そこが意外だった。
「なによ、普段は適当って言いたいわけ?」
「そんなことは……」
「ま、適当だけどね」
「認めた!?」
「でも、本当にダメな時は、ちゃんとしたことくらい言うわよ。でないと、フェイトもソフィアもダメダメになっちゃいそうなんだもの」
「「面目ない……」」
「ふふん、この天災美少女スーパーウルトラハイパーメガ妖精リコリスちゃんに感謝なさい!」
すぐ調子に乗るところは、やっぱりいつも通りだった。
でも、今、天才の文字が違う意味になっていたような……?
「おとーさん、おかーさん……わたし、がまんするね?」
「うん。ごめんね、アイシャ。今度、たくさん食べようね」
「うん!」
「では、まずはごはんを食べて……それから宿を探しましょうか」
「そうだね」
――――――――――
街を歩くこと三十分。
おいしそうな匂いがする店でごはんを食べて、そのまま宿のチェックインをした。
広くて安く、長期滞在も問題なし。
ごはんはおいしく、個室のお風呂もある。
かなりの好条件なのだけど、一つ、問題があって……
「……同じ部屋ですね」
「……そうだね」
一部屋しか空いておらず、同じ部屋に泊まることに。
たくさん人がいるから、他の宿が空いているかわからないし……
これだけの好条件なら、多少のことは気にしない。
そう思っていたのだけど、ベッドが一つだけという予想外の事態に。
サイズはかなり大きく、四人が寝ても問題はない。
ないのだけど……
「「……」」
一つのベッドで一緒に寝るということで、僕とソフィアはあれこれと想像して意識していまい、顔を熱くしてしまう。
「おとーさん? おかーさん?」
「いい、アイシャ。この二人はバカップルだけど、でも初心でダメダメ、っていう典型的な例よ」
「おー?」
リコリスのニヤニヤ顔も気にならないくらい、今の僕達は照れていた。
潮風が吹く街は広く、あちらこちらを水が流れていた。
見ているだけで涼しくなることができて、気持ちいい。
街の奥へ進むと、大きな港。
そして、遊泳場。
港には、大小さまざまな船が停泊していて、遠くから運ばれてきた荷物が降ろされたり、獲れたての魚が運搬されていた。
海の街と言われているだけあって、交易と漁業が栄えているのだろう。
港から少し離れたところに遊泳場が見える。
白い砂浜と澄んだ海。
水着を着て遊んでいる人がたくさんいて、こちらも泳ぎたくなってしまう。
「わぁあああああ」
アイシャが目をキラキラと輝かせていた。
たぶん、海を見るのは初めてなんだろう。
「おとーさん、おかーさん! すごい、水いっぱい!」
「ふふ、そうですね。あれが海ですよ」
「海……おー!」
尻尾がはちきれんばかりにブンブンと横に振られている。
まさか、ここまで楽しそうにするなんて。
ここには、獣人のことを調べるためにやってきたんだけど……
時間があれば、海で遊んでもいいかもしれない。
「しかし、人が多いわねー」
ふわふわと浮くリコリスが、ちょっとげんなりとした様子で言う。
彼女が言う通り、街はたくさんの人であふれかえっていた。
ほとんどが観光客なのだろう。
みんな笑顔を浮かべていて、とても楽しそうだ。
「最近は暑くなってきたから、観光シーズンなのでしょうね」
「露店もたくさんあるね」
「……じゅる……」
露店から流れてくるいい匂いを嗅いで、アイシャがちょっとよだれを垂らしていた。
いつの間に、そんな食いしん坊に……?
「おとーさん、おかーさん」
「えっと……今買い食いをしちゃうと、お昼ごはんが食べられなくなっちゃうから」
「うー……」
お願い、というような感じで、アイシャがじっと見つめてくる。
心が折れてしまいそう。
で、でも、きちんとした教育のために、ここは心を鬼にしないと。
「ダメだよ、アイシャ。買い食いをするなら、ごはんの前じゃなくて後にして……」
「アイシャ、なにを食べたいですか? 一緒に選びましょうか」
「ソフィア!?」
「う……だ、だってアイシャちゃんがかわいすぎるので……ダメです! 私には、こんなアイシャちゃんのお願いを断るなんてできません!」
ダメダメなことを言いつつ、ソフィアがアイシャを抱きしめる。
ともすれば、彼女が娘に甘えているみたいだ。
「あのね……」
「ちょっとソフィア、親がそんなんじゃダメでしょ」
意外というか、リコリスが口を挟んできた。
「親は子供の手本にならないといけないんだから。その親であるあんたが、意味もなく甘やかしてどうするのよ」
「で、ですが、アイシャが食べたいと……」
「確かに、子供のお腹をいっぱいにするのは親の仕事よ。でも、フェイトが言うように、ごはんが食べられなくなったら意味ないでしょ。そういう、きちんとした理由がある時はダメって言うこと。でないと、大人も子供もダメダメになるわよ」
「……申しわけありません」
しゅんと、ソフィアが落ち込んでしまう。
「フェイトもフェイトよ。ソフィアの暴走を許してどうするの?」
「うっ……」
「あんたがしっかりと制御しなさい。フェイト達のためじゃなくて、アイシャのためなのよ」
「ごめんなさい……」
僕も怒られてしまう。
でも、当然のことだと思うので、素直に頭を下げた。
というか……
「リコリスって、けっこう真面目にものを考えているんだね」
そこが意外だった。
「なによ、普段は適当って言いたいわけ?」
「そんなことは……」
「ま、適当だけどね」
「認めた!?」
「でも、本当にダメな時は、ちゃんとしたことくらい言うわよ。でないと、フェイトもソフィアもダメダメになっちゃいそうなんだもの」
「「面目ない……」」
「ふふん、この天災美少女スーパーウルトラハイパーメガ妖精リコリスちゃんに感謝なさい!」
すぐ調子に乗るところは、やっぱりいつも通りだった。
でも、今、天才の文字が違う意味になっていたような……?
「おとーさん、おかーさん……わたし、がまんするね?」
「うん。ごめんね、アイシャ。今度、たくさん食べようね」
「うん!」
「では、まずはごはんを食べて……それから宿を探しましょうか」
「そうだね」
――――――――――
街を歩くこと三十分。
おいしそうな匂いがする店でごはんを食べて、そのまま宿のチェックインをした。
広くて安く、長期滞在も問題なし。
ごはんはおいしく、個室のお風呂もある。
かなりの好条件なのだけど、一つ、問題があって……
「……同じ部屋ですね」
「……そうだね」
一部屋しか空いておらず、同じ部屋に泊まることに。
たくさん人がいるから、他の宿が空いているかわからないし……
これだけの好条件なら、多少のことは気にしない。
そう思っていたのだけど、ベッドが一つだけという予想外の事態に。
サイズはかなり大きく、四人が寝ても問題はない。
ないのだけど……
「「……」」
一つのベッドで一緒に寝るということで、僕とソフィアはあれこれと想像して意識していまい、顔を熱くしてしまう。
「おとーさん? おかーさん?」
「いい、アイシャ。この二人はバカップルだけど、でも初心でダメダメ、っていう典型的な例よ」
「おー?」
リコリスのニヤニヤ顔も気にならないくらい、今の僕達は照れていた。