私には友達がいませんでした。

 あまり体が丈夫ではなくて……
 少し無理をしてしまうと、そのまま寝込んでしまうことが多々ありました。

 そのせいか、運動は得意ではありません。
 体を動かすことも避けていました。

 だから、友達はいませんでした。
 家でじっとしているだけなんて、子供にとってはつまらないし……
 一緒に遊ぶことができないのだから、それも仕方ないと思います。

 なので、私は一人でした。
 いつも一人で遊んでいました。

 家の中で本を読んで……
 お人形さんで遊んで……
 ずっと一人だけど、でも、そういうものなんだな、と認識していました。
 一人でいることが普通なのだと、そう思っていました。

 ……あの日までは。

「~♪」

 その日は散歩をしていました。

 体は丈夫ではないものの、散歩もできないほど軟弱というわけではありません。
 天気の良い日。
 気分が良い日。
 のんびりと散歩をするのが日課でした。

「うわっ!?」

 すると、男の子が飛んできました。

 訂正。
 少し話を盛りました。

 男の子が転びそうになっていて……
 私は手を伸ばして、助けました。

 それがフェイト。
 私の王子さまとの出会いです。

 街の子供は、私と一緒にいるとつまらない。
 そう言って、一緒に遊んでくれません。

 でもフェイトは最近引っ越してきたばかりらしく、一緒に遊んでくれました。
 うれしいというよりは……
 すごく楽しかったです。

 一人で遊び慣れていた私。
 でも、本当は誰かと一緒に遊びたかったんだな……と。
 フェイトと一緒にいることで、そう自覚することができました。

 そして、ある日のこと。

「僕は、ソフィアと一緒にいられるだけで楽しいから」

 大したことのない言葉。
 なんてことのない言葉。

 でも、私にとっては衝撃的なことでした。

 みんな、私と一緒にいるとつまらないと言いました。
 最初は笑顔を浮かべていた子も、すぐに苦い顔になって……
 私のところに来なくなりました。

 だけど……

 フェイトは、そんなことはありませんでした。
 私と一緒にいてくれました。
 楽しいと言ってくれました。

 その言葉がどれだけうれしかったか……

 たったの一言。
 些細な言葉。

 でも、私はそれに救われたのです。

 ここにいてもいい。
 一緒にいるから。
 そう言ってくれたような気がしたんです。

 運命の出会いというものがあるのなら、今がそれなのだと思います。
 フェイトは、私にとって運命の相手。
 王子さま。

 大げさ?
 いいえ、そんなことはありません。

 この時に感じた胸の熱。
 心の温かさ。
 安らぎ。

 それは確かなものだから。
 大事な宝物だから。

 その日から、私にとってフェイトは特別になりました。
 なによりも大事な存在となりました。

 ずっとずっと一緒にいたいと思い……
 そのための努力を始めて……

 うん。

 フェイトに出会えたことが。
 あの日の言葉が。
 私にとっての人生のターニングポイントだったのではないかと思います。

「これからもずっと一緒に……」