午後も街をのんびりと見て回った。

 久しぶりの故郷なので、ソフィアはとても楽しそうにしていた。
 僕も楽しい。

 リーフランドを訪れたのは初めてだ。
 色々なものを見て……
 ソフィアに案内をしてもらって……
 大事な人の故郷をしっかりと見ることができて、とても楽しい。

 そうしていると、時間はあっという間に過ぎて、日が傾いてきた。

 空が赤く染まり、太陽が水平線の向こうに隠れようとする。
 その名残で街が照らされて、宝石のように輝く。

 この瞬間はとても綺麗だ。

「……綺麗ですね」
「……うん」

 僕とソフィアは、高台にある公園からリーフランドを一望していた。
 夕焼けに照らされる街を二人で眺める。

「フェイト」
「うん」
「ありがとうございます」
「えっと……?」

 どうして、お礼を言われているのだろう?
 よくわからなくて首を傾げてしまう。

 そんな僕を見て、ソフィアがくすくすと小さく笑う。

「今のフェイト、小動物みたいでかわいいです」
「そ、そうかな?」
「はい、とてもかわいいですよ。飼って、ずっと一緒にいたいくらいです」
「うーん」

 うれしいような、うれしくないような。

 一応、男なので……
 かわいいというよりは、かっこいいと言われたい。

「ところで、今のありがとうはどういう意味なの?」
「いつも一緒にいてくれて、ありがとうございます」

 ソフィアが笑う。
 ふわりとした柔らかい笑みで、それは、まるで天使のようだった。

「私が大変な時、助けてくれてありがとうございます。いつも欲しい言葉をくれて、ありがとうございます。たくさんの笑顔と優しい思い出をくれて、ありがとうございます」
「僕は、そんなに大したことはしていないんだけど……」

 なんだか照れくさくなり、視線を逸らしてしまう。

 そんな僕の手をソフィアが掴む。
 自然と視線が引き戻された。
 彼女は……やっぱりというか、とても優しい顔をしていた。

「そんなことはありません。フェイトがいなかったら、今の私はいないと思っています。フェイトがいたから、フェイトと出会えたから、こうして元気に笑うことができるんです」
「そう、かな?」
「そうですよ」

 そう言われても、あまり自覚はない。

 いや、訂正。
 ほとんど自覚はない。

 僕がソフィアの力になっていると、彼女は言うのだけど……
 むしろ、僕の方が助けられてばかりだ。

 それなのに、どうして?
 ソフィアの認識は違うのかな?

 だとしたら、どんな景色を見ているのか。
 どういう思い出を見ているのか。
 それを知りたいと思った。

「ソフィアは……」
「フェイト、覚えていますか?」
「え?」
「あの日のこと、覚えていますか?」

 どこか期待が込められた瞳で、ソフィアが僕を見る。

 あの日は……

「うん。もちろん、覚えているよ。あの日、僕とソフィアは初めて出会ったんだよね」

 そう……あれは、十年以上も前のこと。
 そして、別の街でのこと。
 とある冬の日に、僕とソフィアは出会った。