「ここは飲食店でしょ! ナンパがしたいなら、そういう店に行ってくれる? あ、でも、あんたみたいな顔じゃあ、無理か。お金でしか相手してくれないものね。かわいそう……あ、ダメ、泣けてきちゃう。でも、同情はしてあげないわ! 顔がダメだとしても、それはそれでいいの。私、内面を重視するタイプだから。でも、あんたはダメダメのダメ。心がとんでもないブサイクよ! だから、とっとと家に帰りなさい!」
リコリスの怒涛の攻撃。
というか……
そこまで言うの? と、僕もちょっと引いてしまう。
あと、アイシャの教育に悪いから、少し控えてほしい。
「……」
大柄な男はポカンとして、
「なんだとてめえ!?」
やや遅れて、ものすごい勢いで罵倒されたことを理解したらしく、激怒した。
リコリスは、ササッと僕の後ろに隠れる。
「さあ、やっちゃいなさい、フェイト! 正義の裁きを与えるのよ!」
「なんかもう、色々と台無しだよ……」
煽るだけ煽っておいて、最後は僕に頼るなんて。
プライドはないのだろうか?
まあ、リコリスなら……
「プライド? そんなもので飯が食えるのなら苦労はしないわ!」
なんて、言いそうだけど。
「このチビをかばう気か? なら、まずはてめえからだ!」
「うわわわ」
いきなり殴りかかってきた。
なんて気が短い。
アイシャがいるため、避けることはできない。
男の拳を手の平で受け止める。
「な、なに!? 俺の拳を受け止めただと?」
「あのー……今のはリコリスも悪いと思うから、お互いさま、っていうことで手打ちにしませんか? ほら、こんなところで騒ぐわけにも……」
「うるせえ! バカにされたまま、黙っていられるかよ!」
「……仕方のない人だな」
お酒を飲むなとは言わないけど、飲まれないでほしい。
「がっ!?」
足を払い、倒れたところに拳を叩き込む。
一応、手加減はしておいた。
男は苦しそうな声をこぼして……
そのまま気絶する。
すると店内から、よくやった、いいぞ、なんていう歓声が湧き上がる。
どうやら、みんな、この男の行いに辟易としていたらしい。
店の人にも感謝されてしまい、僕達に対してはお咎めなし。
一方、男は、店員が通報してやってきた騎士によって連行されていった。
「ふう……これで、ゆっくりとごはんを食べられるかな」
「お腹、減った……」
のんびりと、アイシャがそんなことを言う。
この子、意外と大物になるのかもしれない。
「ねえねえ」
ふと、男に絡まれていた女の子に声をかけられた。
女の子は興味津々という様子で、キラキラとした顔をしている。
「助けてくれて、ありがとう」
「ううん、大したことはしていないよ。それに……」
「それに?」
「キミなら、僕の助けなんていらなかったんじゃないかな、なんて」
「へえ」
女の子は感心したような顔に。
そんな反応をするということは、やっぱり、助けは不要だったのだろう。
「ボクが強いってこと、知っていたの?」
「いや、なにも。キミのことは初めて見るし……ただ、一瞬だけど、ものすごい圧を放つから、強いのかな、って」
「ふーん……お兄さん、鋭いんだね。ねね、ボクも一緒していいかな?」
「えっと……」
リコリスとアイシャを見ると、問題ないというように頷いた。
アイシャは、少し人見知りをしてしまっているのだけど……
でも、いつまでもそのままというわけにはいかない。
ついでという感じで悪いのだけど、この子で練習をしてもらおう。
「うん、いいよ。一緒に食べようか」
「ありがと♪ あ、店員さん。ボク、こっちの席に移るから、注文したヤツもこっちにお願いね」
女の子は、こちらのテーブルに移動して、
「あ、自己紹介を忘れていたね。ボクは、レナ。レナ・サマーフィールド。よろしくね」
「僕は、フェイト・スティアート。こっちはリコリス、そして、アイシャだよ」
「ふふん、よろしくしてあげるわ!」
「よろ、しく……お願いします」
「うんうん。みんな、よろしくねー!」
レナは、とても人懐っこい性格をしているみたいだ。
会ったばかりなのに、長年の友達のような感じで接している。
でも、不快な感じはしない。
むしろ、その距離感が心地いいとさえ感じてしまう。
これは彼女の才能なのかもしれないな。
「フェイトって、すごく強いんだね」
「そんなことないよ」
「えー、謙遜は良くないと思うな。だって、あんな大男を、一発で倒しちゃったじゃん」
「うーん……そこそこ鍛えているとは思うけど」
今でも、毎日、ソフィアに訓練をつけてもらっている。
だから、それなりの自信はついてきた。
でも、まだまだだ。
ドクトルのような強敵もいるし、世界には、僕の知らないとんでもない相手がゴロゴロしているに違いない。
「強い、って言えるような自信は、まだないかな」
「そうなの?」
「僕よりも強い相手なんて、それこそ星の数ほどいるだろうし……」
なにより、一番身近にいる存在……ソフィアが、とんでもなく強いからね。
「ただ、いつか、胸を張って僕は強いんだぞ、って言えるようになりたいから、そのための努力は欠かさないよ」
「おー……なんか、かっこいいね」
「そ、そうかな?」
「うん、すごくかっこいいと思うよ。そんな風に言える男って、なかなかいないと思う。ほら、さっきのヤツみたいに、男って妙にプライドが高かったりするじゃない?」
同じ男として、耳が痛い。
「でも、フェイトはそんなことないからね。自分がまだまだ、っていうことをきちんと認めた上で、さらに高みを目指している。そういうところは、すごくかっこいいと思うよ」
「あ、ありがとう」
ここまで褒められるなんて、ソフィア以外で初めてだ。
ついつい、顔を熱くして照れてしまう。
「うーん」
レナは、じっと僕の顔を見つめる。
「……うん、決めた!」
「どうしたの?」
「フェイト、ボクの彼氏にならない?」
リコリスの怒涛の攻撃。
というか……
そこまで言うの? と、僕もちょっと引いてしまう。
あと、アイシャの教育に悪いから、少し控えてほしい。
「……」
大柄な男はポカンとして、
「なんだとてめえ!?」
やや遅れて、ものすごい勢いで罵倒されたことを理解したらしく、激怒した。
リコリスは、ササッと僕の後ろに隠れる。
「さあ、やっちゃいなさい、フェイト! 正義の裁きを与えるのよ!」
「なんかもう、色々と台無しだよ……」
煽るだけ煽っておいて、最後は僕に頼るなんて。
プライドはないのだろうか?
まあ、リコリスなら……
「プライド? そんなもので飯が食えるのなら苦労はしないわ!」
なんて、言いそうだけど。
「このチビをかばう気か? なら、まずはてめえからだ!」
「うわわわ」
いきなり殴りかかってきた。
なんて気が短い。
アイシャがいるため、避けることはできない。
男の拳を手の平で受け止める。
「な、なに!? 俺の拳を受け止めただと?」
「あのー……今のはリコリスも悪いと思うから、お互いさま、っていうことで手打ちにしませんか? ほら、こんなところで騒ぐわけにも……」
「うるせえ! バカにされたまま、黙っていられるかよ!」
「……仕方のない人だな」
お酒を飲むなとは言わないけど、飲まれないでほしい。
「がっ!?」
足を払い、倒れたところに拳を叩き込む。
一応、手加減はしておいた。
男は苦しそうな声をこぼして……
そのまま気絶する。
すると店内から、よくやった、いいぞ、なんていう歓声が湧き上がる。
どうやら、みんな、この男の行いに辟易としていたらしい。
店の人にも感謝されてしまい、僕達に対してはお咎めなし。
一方、男は、店員が通報してやってきた騎士によって連行されていった。
「ふう……これで、ゆっくりとごはんを食べられるかな」
「お腹、減った……」
のんびりと、アイシャがそんなことを言う。
この子、意外と大物になるのかもしれない。
「ねえねえ」
ふと、男に絡まれていた女の子に声をかけられた。
女の子は興味津々という様子で、キラキラとした顔をしている。
「助けてくれて、ありがとう」
「ううん、大したことはしていないよ。それに……」
「それに?」
「キミなら、僕の助けなんていらなかったんじゃないかな、なんて」
「へえ」
女の子は感心したような顔に。
そんな反応をするということは、やっぱり、助けは不要だったのだろう。
「ボクが強いってこと、知っていたの?」
「いや、なにも。キミのことは初めて見るし……ただ、一瞬だけど、ものすごい圧を放つから、強いのかな、って」
「ふーん……お兄さん、鋭いんだね。ねね、ボクも一緒していいかな?」
「えっと……」
リコリスとアイシャを見ると、問題ないというように頷いた。
アイシャは、少し人見知りをしてしまっているのだけど……
でも、いつまでもそのままというわけにはいかない。
ついでという感じで悪いのだけど、この子で練習をしてもらおう。
「うん、いいよ。一緒に食べようか」
「ありがと♪ あ、店員さん。ボク、こっちの席に移るから、注文したヤツもこっちにお願いね」
女の子は、こちらのテーブルに移動して、
「あ、自己紹介を忘れていたね。ボクは、レナ。レナ・サマーフィールド。よろしくね」
「僕は、フェイト・スティアート。こっちはリコリス、そして、アイシャだよ」
「ふふん、よろしくしてあげるわ!」
「よろ、しく……お願いします」
「うんうん。みんな、よろしくねー!」
レナは、とても人懐っこい性格をしているみたいだ。
会ったばかりなのに、長年の友達のような感じで接している。
でも、不快な感じはしない。
むしろ、その距離感が心地いいとさえ感じてしまう。
これは彼女の才能なのかもしれないな。
「フェイトって、すごく強いんだね」
「そんなことないよ」
「えー、謙遜は良くないと思うな。だって、あんな大男を、一発で倒しちゃったじゃん」
「うーん……そこそこ鍛えているとは思うけど」
今でも、毎日、ソフィアに訓練をつけてもらっている。
だから、それなりの自信はついてきた。
でも、まだまだだ。
ドクトルのような強敵もいるし、世界には、僕の知らないとんでもない相手がゴロゴロしているに違いない。
「強い、って言えるような自信は、まだないかな」
「そうなの?」
「僕よりも強い相手なんて、それこそ星の数ほどいるだろうし……」
なにより、一番身近にいる存在……ソフィアが、とんでもなく強いからね。
「ただ、いつか、胸を張って僕は強いんだぞ、って言えるようになりたいから、そのための努力は欠かさないよ」
「おー……なんか、かっこいいね」
「そ、そうかな?」
「うん、すごくかっこいいと思うよ。そんな風に言える男って、なかなかいないと思う。ほら、さっきのヤツみたいに、男って妙にプライドが高かったりするじゃない?」
同じ男として、耳が痛い。
「でも、フェイトはそんなことないからね。自分がまだまだ、っていうことをきちんと認めた上で、さらに高みを目指している。そういうところは、すごくかっこいいと思うよ」
「あ、ありがとう」
ここまで褒められるなんて、ソフィア以外で初めてだ。
ついつい、顔を熱くして照れてしまう。
「うーん」
レナは、じっと僕の顔を見つめる。
「……うん、決めた!」
「どうしたの?」
「フェイト、ボクの彼氏にならない?」