エドワード・アスカルト。
リーフランドの領主。
兼、神王竜剣術リーフランド道場師範。
そして……
ソフィアの父親である。
「驚いた。ソフィアのお父さんって、領主さまだったんだ……」
「言っていませんでした?」
「聞いていないよ」
「同じく」
僕とリコリスは、同時に首を横に振り、
「りょーしゅ?」
意味がわからないらしく、アイシャは小首を傾げた。
そんな彼女の頭を撫でつつ、説明をする。
「えっと……簡単に言うと、街で一番偉い人かな?」
「おーさま?」
「王さまよりは偉くないかな。王さまに街を任されているというか、だから、その次くらいに偉いというか……」
「んー?」
アイシャは、ますます不思議そうに。
困った。
小さい子にものを教えるって、かなり大変なことなんだな。
「つまり、私とフェイトのような関係なのですよ」
「おとーさんとおかーさん?」
「フェイトはとても強くて、かっこいいでしょう? でも、私に夢中で、なんでもお願いを聞いてくれます。つまり、そういうことです」
「おー」
そんな説明でいいのだろうか……?
色々と訂正したいのだけど……
でも、アイシャが目をキラキラとさせて、納得しているものだから訂正しづらい。
「お父さまは今、どのような感じですか?」
「あー……」
「えっと……」
アクセルとリナは互いの顔を見て、どうする? という感じで視線をさまよわせた。
あまり良い感じではないのだろう。
「怒らないでくださいよ?」
「師匠ってば、お嬢さんが道場を継がないで旅に出たことをかなり不満に思っているみたいで……」
「結婚させることで、道場を継いでもらう。さらに、そのまま街にずっと残ってもらう」
「なんてことを考えているみたい」
「……ヘェ」
ソフィアが絶対零度の殺気を撒き散らして、ゾクリと背中が震えた。
殺気を我が娘に向けるなんて真似はしていないため、アイシャはキョトンとしているが……
それ以外の人……つまり、僕達は汗だくだ。
ものすごい怒っている。
こうなったソフィアは、本当に怖い。
「私の意思をまったく確認しないで、そのようなことを勝手に計画して、推し進めるなんて……ふふっ、おかしいですね。おかしすぎて、笑いがこぼれてきました」
「お嬢さま、こええ……」
「怒らないで、って言ったのに……」
アクセルとルナは、ガタガタと震えていた。
同じ門下生だから、怒った時のソフィアの恐ろしさを知っているらしい。
「穏便に、話をするだけで説得しようと思っていましたが……これは、実力行使をした方が早いかもしれませんね。お父さまは、色々と勘違いされているみたいですし……ふふっ。これを機会に、思い改めてもらう必要がありそうですね」
「……ねえ、フェイト」
「……なに、リコリス」
「あんたの好きな人、怖いんですけど」
「僕も怖いから、我慢して」
「ふふっ」
リーフランドに到着するまでの間……
ソフィアは、ずっとクスクスと笑っていたのだった。
――――――――――
リーフランドに到着した後、宿を探すことなく、すぐにソフィアの実家を訪ねた。
僕と一緒にいることに、なに一つ問題はない。
やましいことなんて欠片もないし、むしろ、プラスしかない。
そんなことを示すように、ソフィアは、実家にある道場の扉をくぐる。
「ただいま戻りました」
「「「っ!?」」」
突然ソフィアが現れて、練習中だった門下生達は、すごく動揺していた。
最近、道場に通い始めたのか、いくらかの門下生は不思議そうな顔をしていたが……
それは一部だけ。
大半の門下生はソフィアのことを知っているらしく、彼女の突然の帰還に驚いている。
「……早かったな」
動揺する門下生達が左右に移動して、道ができる。
そこから姿を見せたのは……
エドワード・アスカルト。
リーフランドの領主であり、神王竜剣術リーフランド支部の師範。
ソフィアのお父さんだ。
ソフィアは遅くに生まれた子供らしく、エドワードさんは六十を超えている。
白髪が混じった髪。
年齢を重ねると共に、細くなる体。
しかし、背筋はピンと伸びていて、体もしっかりとしている。
鋭い眼圧に、抜き身の刃のような鋭いオーラ。
年齢による衰えは一切感じない。
むしろ、今こそが全盛期なのだと、そう語っているかのようだ。
「あと二週間くらいはかかると思っていたが……」
「少しでも早く、お父さまとお話をしなければいけないと思い、急ぎました」
「……」
「お父さま?」
「いや、なんでもない」
なんだろう?
今、エドワードさんの顔が、一瞬、ニヤけたような?
気のせいかな。
とても厳しい人という記憶があるし……
ニヤニヤするなんて、ありえないか。
「話というのならば、儂からもたくさんあるのだが……まずは、ソフィアの話から聞こうか」
「はい、ありがとうございます、お父さま」
ソフィアはにっこりと微笑み、
「では……」
そのまま剣を抜いた。
予備の剣ではなくて、聖剣エクスカリバーを抜いた。
「ふざけたことを仰るお父さまは、ちょっと痛い目に遭ってくださいね?」
リーフランドの領主。
兼、神王竜剣術リーフランド道場師範。
そして……
ソフィアの父親である。
「驚いた。ソフィアのお父さんって、領主さまだったんだ……」
「言っていませんでした?」
「聞いていないよ」
「同じく」
僕とリコリスは、同時に首を横に振り、
「りょーしゅ?」
意味がわからないらしく、アイシャは小首を傾げた。
そんな彼女の頭を撫でつつ、説明をする。
「えっと……簡単に言うと、街で一番偉い人かな?」
「おーさま?」
「王さまよりは偉くないかな。王さまに街を任されているというか、だから、その次くらいに偉いというか……」
「んー?」
アイシャは、ますます不思議そうに。
困った。
小さい子にものを教えるって、かなり大変なことなんだな。
「つまり、私とフェイトのような関係なのですよ」
「おとーさんとおかーさん?」
「フェイトはとても強くて、かっこいいでしょう? でも、私に夢中で、なんでもお願いを聞いてくれます。つまり、そういうことです」
「おー」
そんな説明でいいのだろうか……?
色々と訂正したいのだけど……
でも、アイシャが目をキラキラとさせて、納得しているものだから訂正しづらい。
「お父さまは今、どのような感じですか?」
「あー……」
「えっと……」
アクセルとリナは互いの顔を見て、どうする? という感じで視線をさまよわせた。
あまり良い感じではないのだろう。
「怒らないでくださいよ?」
「師匠ってば、お嬢さんが道場を継がないで旅に出たことをかなり不満に思っているみたいで……」
「結婚させることで、道場を継いでもらう。さらに、そのまま街にずっと残ってもらう」
「なんてことを考えているみたい」
「……ヘェ」
ソフィアが絶対零度の殺気を撒き散らして、ゾクリと背中が震えた。
殺気を我が娘に向けるなんて真似はしていないため、アイシャはキョトンとしているが……
それ以外の人……つまり、僕達は汗だくだ。
ものすごい怒っている。
こうなったソフィアは、本当に怖い。
「私の意思をまったく確認しないで、そのようなことを勝手に計画して、推し進めるなんて……ふふっ、おかしいですね。おかしすぎて、笑いがこぼれてきました」
「お嬢さま、こええ……」
「怒らないで、って言ったのに……」
アクセルとルナは、ガタガタと震えていた。
同じ門下生だから、怒った時のソフィアの恐ろしさを知っているらしい。
「穏便に、話をするだけで説得しようと思っていましたが……これは、実力行使をした方が早いかもしれませんね。お父さまは、色々と勘違いされているみたいですし……ふふっ。これを機会に、思い改めてもらう必要がありそうですね」
「……ねえ、フェイト」
「……なに、リコリス」
「あんたの好きな人、怖いんですけど」
「僕も怖いから、我慢して」
「ふふっ」
リーフランドに到着するまでの間……
ソフィアは、ずっとクスクスと笑っていたのだった。
――――――――――
リーフランドに到着した後、宿を探すことなく、すぐにソフィアの実家を訪ねた。
僕と一緒にいることに、なに一つ問題はない。
やましいことなんて欠片もないし、むしろ、プラスしかない。
そんなことを示すように、ソフィアは、実家にある道場の扉をくぐる。
「ただいま戻りました」
「「「っ!?」」」
突然ソフィアが現れて、練習中だった門下生達は、すごく動揺していた。
最近、道場に通い始めたのか、いくらかの門下生は不思議そうな顔をしていたが……
それは一部だけ。
大半の門下生はソフィアのことを知っているらしく、彼女の突然の帰還に驚いている。
「……早かったな」
動揺する門下生達が左右に移動して、道ができる。
そこから姿を見せたのは……
エドワード・アスカルト。
リーフランドの領主であり、神王竜剣術リーフランド支部の師範。
ソフィアのお父さんだ。
ソフィアは遅くに生まれた子供らしく、エドワードさんは六十を超えている。
白髪が混じった髪。
年齢を重ねると共に、細くなる体。
しかし、背筋はピンと伸びていて、体もしっかりとしている。
鋭い眼圧に、抜き身の刃のような鋭いオーラ。
年齢による衰えは一切感じない。
むしろ、今こそが全盛期なのだと、そう語っているかのようだ。
「あと二週間くらいはかかると思っていたが……」
「少しでも早く、お父さまとお話をしなければいけないと思い、急ぎました」
「……」
「お父さま?」
「いや、なんでもない」
なんだろう?
今、エドワードさんの顔が、一瞬、ニヤけたような?
気のせいかな。
とても厳しい人という記憶があるし……
ニヤニヤするなんて、ありえないか。
「話というのならば、儂からもたくさんあるのだが……まずは、ソフィアの話から聞こうか」
「はい、ありがとうございます、お父さま」
ソフィアはにっこりと微笑み、
「では……」
そのまま剣を抜いた。
予備の剣ではなくて、聖剣エクスカリバーを抜いた。
「ふざけたことを仰るお父さまは、ちょっと痛い目に遭ってくださいね?」