「……浅川って良い意味でも悪い意味でも東雲大臣に似てるよな」






東雲久寿は清廉潔白、不正を好むような、人を陥れるようなことを行うことが嫌いな人物なのだと聴取をして見て分かった。
その性格は一颯にも影響を与え、彼の警察官としての形を作り出した。
だが、それは少しばかり警察官としては甘いのかもしれない。





一颯は警察官としては優しすぎる。
警察は常に正義を貫かねばならない。
それと同時に人を疑い、時には恨まれ嫌われなくてはならない。
だが、彼は人を疑うことが苦手のようだ。
疑うことが出来ても、信じたいという気持ちが出て来て疑いきれていない。





「父と?」





「お前は九条のパワハラが原因で羽田部が暴行に及んだと読んだ。だが、それと同時に同情しなかったか?」





「っ?!」






「どんなパワハラを受けようとも手を出してしまった方が負けだ。……俺が言いたいことが分かるか?」






「……同情するなってことですか?」







一颯は署の駐車場に車を停め、後部座席の赤星を見た。
椎名は何も言わない。
恐らく、赤星と同じ考えなのだろう。
一颯自身犯人に同情しているつもりはない。
だが、無意識にそうしてしまっているのかもしれない。
彼は優しすぎるから。





「同情するなとは言わない。それがお前の性格だからな。でも、判断は見謝るなよ」






「まあ、何かあれば京が止めるだろうから大丈夫だろう」






椎名と赤星は先に車を降りていく。
車内に残っている一颯はハンドルに額を押し当て、ため息を吐く。
犯人に同情してしまっている――。
それは警察官としてはあまり誉められたことではないのかもしれない。
それでも、一颯は犯人を疑いきれない。






「俺は甘いのかな、啓人……」






今は亡き親友。
一颯の夢を守るために人を殺し、自ら命を絶った親友の為にも刑事であり続けたい。
それが親友から一颯に託されたものだから。
一颯は深呼吸をすると、車から降りる。





すると、降りた先に目深にフードを被った女がいた。
顔は見えない。
だが、女の雰囲気には覚えがあった。