二年後――。





「……とうとう起きたか」





一颯は目の前の遺体の凄惨さに、二年前の事件を思い出す。
神室志童、通称ペルソナ。
ペルソナが最後に事件を起こしたのは二年前、それも殺人ではなく、拉致監禁事件。
その事件以降、ペルソナが関係する事件は二年の間ピタリと無くなった。





だが、再び事件が起きた。
まだペルソナが関係しているかは分からない。
それでも、関係しているとしか思えなかった。
そう思わせるだけの証拠が現場に残っていたのだ。







「《七つの大罪を犯した者よ、我に従え。さすれば、煉獄より天へ導かん》」






被害者の血で書かれた文字を一颯の隣にいる汐里が読み上げる。
その下には惨殺された女の遺体があり、身体には七つの大罪の一つ、ラテン語で色欲を意味する《luxuria》と刻まれていた。





「色欲……。七つの大罪の一つ……」







「煉獄……天へ導かん……か……」








唸るように呟く一颯と汐里の耳に!少し離れた所から情けない男の声が届いた。
新たに捜査一課に異動してきた青年が遺体の凄惨さに腰を抜かしたのだ。
その見覚えのある風景に、汐里は不謹慎ながらもクスリと笑う。







「今年の新人も随分とヘタレのようだな」







「俺はもうヘタレじゃないですよ」






汐里にバカにするような目に見上げられ、一颯はカチンときた。
あれから二年が経っている。
遺体を見て腰を抜かしたり、悲鳴をあげるあの頃の一颯はもういない。
どんな事件にも動じない凛とした刑事になっていた。






「そうだな。よし、行くぞ。――浅川刑事」






「はい!」






一颯は相棒の汐里と共に新たな事件へ挑んでいく。
だが、その事件は史上最悪の残酷な事件として今後語り継がれることになる。
その事を二人は知るよしもなかった――。















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