まず、汐里の怪我は頭を数針縫ったが、身体は何の問題はなかった。
椎名と赤星曰くむしろ、一颯の方が痛々しく見えるらしい。
両手の爪は割れていたり、剥がれていたりして血まみれ。
身体も体当たりを繰り返したせいで、全身内出血だらけ。
極めつけに改造されたスタンガンで付けられた火傷の跡が手首に残っている。






「こいつ、車イスに乗ってるけど普通に元気だからな。少なくともお前よりは動ける」






「浅川、全身痛いだろ。特に指先」






「めっちゃくちゃ指先が痛いです。縫われてますよね、これ?」







「左手の中指と右手の人差し指と中指は縫ってるらしいぞ。ぱっくり切れてたみたいだからな」





「自分の手ですけど、見たくない」







きっと直視できない。
あの時は必死だったから一颯も痛みはあったものの、今よりは感じていなかった。
痛みというものは自覚したり、想像すると痛みが増すものだ。






次に話したのは神室の行方だ。
椎名達が駆けつけたときには神室の姿はなく、監禁の容疑で探しているが、見つかっていないようだ。
これまで通り雲隠れしつつ、犯罪に関わってくるに違いない。
神室の行方は《七つの大罪》と共に公安が追うことになったらしい。







「監禁なんだから捜一(うち)の領分でもあるんだけどな」






「そこに関しては取っ捕まえ次第、うちで取り調べる。あと、殺人の教唆に関してもな」






「取っ捕まえるって……。インテリイケメンの初期設定何処行ったんですか?」






「インテリイケメン枠は一応椎名さんと氷室ですからね」







誰に説明しているか分からないが、椎名に元ヤンの雰囲気が出てきていることに汐里と赤星が懸念を示す。
一颯は苦笑いだが、椎名は不服そうだ。
毛嫌いする氷室と同じ枠に収められていることが、だ。






そして、一番の謎。
捜査一課課長の司馬のことだ。
何故司馬はあの場所が分かり、二人を助けた後に一颯をスタンガンで気絶させたのか。
そのことに関しては単純なことだった。
一颯達を助けたのは神室が変装した司馬で、本物の司馬は喫茶店の二階で監禁されていたのだ。





「司馬課長は今、この病院に入院してる。少し脱水状態だったようだから」






「課長、神室の居場所突き止めたまでは良かったが、それを逆手に取られたようだ。お陰で監禁されるはめになった」






椎名の言葉には労いがあるが、汐里の言葉には少しトゲのあるように思える。
直属の上司の失態が許せないのかもしれない。
だが、汐里がトゲのあるように言うのはいつものことだとも思う。
一颯には判断が難しかった。