「司馬課長は何故話さなかったんですかね?京が神室と接触すると司馬課長に話さないわけが無いでしょうし」
「分からん。だが、今はそれよりも京達を探すのが先決だ。重原」
赤星達の疑念は消えない。
だが、今は消息を絶った二人を探さねばならない。
椎名は不服ながらも公安の重原に頼みごとをすることに決める。
大変不服であり、大変屈辱なことである。
「物凄く嫌な上に凄く屈辱的だが、うちの刑事二人の捜索に協力して頂きたい。公安は《七つの大罪》の情報を、俺達は仲間を探している。見つけた先にどちらもあるはずだ」
「奇遇だな。うちも物凄く嫌だし屈辱的だが、協力を願い出ようとしていたところだ。今のところ認めたくはないが、捜一の方がうちより《七つの大罪》に近い」
椎名も重原もかなり嫌な顔をしているし、捜一の捜査員も公安の捜査員もかなり嫌そうな顔をしている。
赤星は氷室の方に行くと威嚇するが、氷室自身は平然としていた。
例えるならば、小型犬のポメラニアンが大型犬のシェパードに喧嘩を売っているように見える。
「おい、赤星。お前が氷室に喧嘩売っても相手にされないぞ。いや、されてないぞ。よく大型犬に吠えて相手にされてないうちの犬みたいだ」
「椎名さんん家のワンコってポメラニアンじゃないですか!?」
大型犬に喧嘩を小型犬に見えていたのはどうやら例えではないようだ。
話が逸れていきそうだったので、重原が咳払いをして場を取り持つ。
どうも、赤星が絡むと緊張感が出ない。
そう心の中でもぼやくのは捜一の捜査員達だった。
「よし、中に突入する」
場が落ち着いたところで公安が裏から、捜一が表から同時に喫茶店の中に踏み込む。
だが、店内は人一人いない。
捜一と公安がくまなく店内を探すが、一颯や汐里、神室志童の姿は何処にもない。
「一体何処に……」
「赤星!」
焦る赤星を椎名が座席の方から呼ぶ。
赤星が駆け寄ればそこには血の痕があり、血痕が付いたスマートフォンが床に落ちていた。
そのスマートフォンには見覚えがあった。
汐里のものだ。
赤星が拾い上げようとしゃがむと、テーブルの裏に何かがくっついているのが見えた。
「何だ、これ?」
赤星はテープでテーブルの下に貼られたそれを剥がす。
それは小型の盗聴機で、録音されているのかまだ動いたままだった。
録音を止め、録音されていた音声を再生する。