しゅっ……隼理くんっ‼
「なっ……なんで……なんでそのことを……っ」
隼理くんが知っているの……⁉
「……なんでって……
廊下にいた生徒たちが夕鶴と芦達先生の名前を出して
『お姫様抱っこされてたよね』とか『お似合いだよね』だとか、
きゃあきゃあ言ってたから」
「あっ……あのね、隼理くん、
それは……それはね、私が階段から落ちたときに周りに誰もいなかったの。
どうしようと困っていたときに偶然、芦達先生が通りかかって、んん……っ‼」
全てを言い終わる前に。
突然、隼理くんに唇を塞がれた。
それは深く激しく。
息ができなくなりそうなくらいに。
呼吸をしたくて。
唇を離そうと顔を左右に動かそうとするけれど。
隼理くんの唇がそれを許してくれない。
これ以上続けると。
意識が朦朧としそうになる。
酸素が足りなくなり。
無意識のうちに声が漏れる。
それは自分とは思えないくらいの甘ったるさ。
「……色っぽい」
ようやく隼理くんが唇を離した。
けれど。
「そんなにも色っぽい声を出されたら止まらなくなる」
そんなことを言ってくる。
息も切れていない余裕な様子で。
私は隼理くんと違って余裕なんて全くない。
今やっと酸素を取り入れることができたのに。
これ以上は……‼
そう思っていると。
「だけど、その前に。
話の続き」
今にも唇と唇が触れ合いそうな間隔。
そんな間隔のまま。
「誰もいなかったのならスマホでメッセージを送ってくれればよかったのに」
そう言った、隼理くん。
隼理くんの温もりが。
唇に伝わる。
「……それが、運が悪いことに今日に限ってスマホを忘れてしまって。
でっ……でも、スマホを持っていたとしても
隼理くんには連絡することはできなかったよ」
まだ酸素が足りていない。
だから呼吸が乱れた話し方になってしまう。
話しているときに動く唇。
そのたびに隼理くんの唇に触れてしまいそうになる。
それだけでもドキドキが加速する。
「なんで」
私の返答に。
隼理くんは納得がいっていない様子。