「……わかっている」


 え……。


「頭では……。
 でも……」


 ……隼理くん……。

 少し怖くなっていた表情や声のトーンが……。

 今は……。
 なんだか……。
 少しだけ辛そうで苦しそうで……。


「……嫌なんだ……」


 ……?

 嫌……?


「心の底では、ものすごく嫌がってる。
 たとえ仕方がなかったことだったとしても……
 夕鶴が他の男に触られたことが……」


 隼理くん……。


 隼理くんの気持ち……。
 伝わってくる。
 痛いほど……。


「……夕鶴……」


 隼理くんは静かに私の名前を呼ぶと……。

 やさしく私の唇に……。

 隼理くんのやさしいキスに。
 心も身体も溶け込んでいく。


 ここは保健室。

 誰かが突然来るかもしれない。
 それなのに。
 そんなリスクを抱えてでも。
 心と身体が、それを欲しがっている。


「……そういえば」


 隼理くんのやさしいキスに溶け込んでいると。
 突然、隼理くんの唇が離れた。


 私って本当に単純。
 美輝さんのことで悩んでいるのに。
 隼理くんにキスをされて。
 それを止められたら、もっと欲しがるなんて。


 隼理くん、なんで止めてしまうの。
 私は、もっと欲しいのに。


 そう思っているけれど。
 隼理くんは何かを言おうとしている。

 何を言おうとしているのだろう。


「……なんで……」


 ……?


「……芦達先生に……お姫様抱っこ……されたの……?」


 ……‼