「当たりでしょ」


 え……。

 えっ。
 えっ⁉ えっ⁉

 芦達先生っ。
 今、私の足に湿布を貼っていて、私の顔を見ていないのにっ。
 だから私の表情に変化があったとしても、わからないはずなのにっ。
 どうして『当たりでしょ』だなんて。
 そんな確信しきったように……‼


 って。

 でも。
 そうなると。
 芦達先生が言っていた『彼氏いるでしょ』という言葉は。
 当てずっぽう、だったということになる。

 だから。
 私と隼理くんが恋人同だということ。
 芦達先生に気付かれていない、と思う。
 ……ひとまずセーフ……かな。


「……あのさ、神城さん」


 そう思っていると。

 芦達先生は私の足に向けていた視線を私の顔の方に向けた。

 そして、そのまま私の瞳をじっと見つめた。

 こんなにも純粋な瞳があるのかと思うくらい。
 濁りのない透き通った、芦達先生のきれいな瞳。

 そんな純粋で美し過ぎる瞳に見つめられると。
 全く目を逸らすことができない。

 だから。
 私と芦達先生は。
 見つめ合った状態に……。


 その時間は。
 どれくらいだろう。

 きっと。
 そんなには経っていないのだろう。

 けれど。
 感覚としては。
 随分、長い時間のよう。


 ……芦達先生……?

 なぜ芦達先生は。
 無言のまま見つめてくるのだろう。

 どうしよう。
 一体どうすればいいのか。
 全く思いつかない。
 というより。
 全然わからない。

 そう思っている間にも。
 芦達先生と見つめ合うことが続いている。

 男の人と見つめ合うこと。
 それ自体、恥ずかしいというのに。
 ずっと見つめ合うなんて。
 ものすごく恥ずかしいこと。

 だから。
 一秒でも早く。
 芦達先生に何か話して欲しい。
 そんな気持ちでいっぱいになる。


「神城さんの彼氏って……」


 そう思っていると。

 芦達先生が口を開いた。


 けれど。

 芦達先生……?

 何を言おうとしているの……?

 私の彼氏―――。

 その人が誰かということ。
 そのことに触れようとしている……?

 ……‼

 ということは。
 やっぱり。
 やっぱり芦達先生は。
 私の彼氏が誰かということを。
 知っている……⁉
 私の彼氏は―――。
 隼理くん―――。
 ということを―――。



 “ガラッ”


 え……。