やっぱり……‼
保健室へ向かう途中の廊下には。
金曜日の放課後ということもあって。
何人かの女子生徒たちがリラックスした様子で会話を楽しんでいる。
だから当然。
気付かないはずがない。
私と芦達先生の今のこの状況を。
その場にいる、ほとんどの女子生徒たちが。
一斉に私と芦達先生に気付いた。
女子生徒たちの反応は……。
予想通り、驚いた表情をしていた。
驚き過ぎてか。
声は全く出ておらず。
中には口を半開きにして固まっている女子生徒たちもいる。
私と芦達先生に気付いていない女子生徒たちが、驚いている女子生徒たちのことを見て、どうしたのだろうと思いながら、驚いている女子生徒たちと同じ方向を見た。
気付いていなかった女子生徒たちの表情が、みるみるうちに変化していくことがはっきりとわかった。
女子生徒たちの様子を見て。
やっぱり、こうなるよね。
そう思ったと同時に。
マズいな、どうしよう、と思った。
だって。
先生が生徒のことをお姫様抱っこしているなんて……‼
けれど、芦達先生は。
そのことは、まるでお構いなしのように、どんどん前に進んで。
驚き過ぎて固まっている女子生徒たちの中を堂々と通っている。
……それにしても……。
廊下、静か過ぎる。
そのため芦達先生の足音だけが響き渡る。
それが、より緊張感を増していく。
静か過ぎる廊下を。
芦達先生が私をお姫様抱っこして歩いている。
そのスピードに合わせるように。
女子生徒たちが私と芦達先生のことを無言のまま目で追っている。
…………。
わかっていた。
お姫様抱っこされている時点で。
こうなることは。
それに。
お姫様抱っこしている先生が。
隼理くんと並んでイケメンツートップのアイドル的存在の芦達先生。
そんな先生にお姫様抱っこされている。
それを目の当たりにしている女子生徒たちにとっては、とんでもないくらいの出来事にしか思えないのだと思う。
無理もないよね。
私が逆の立場で。
見ている側の方だとしたら。
きっと驚くと思う。
のだけど。
……それにしても……。
あまりにも静か過ぎるような……。
ここまで静か過ぎると……。
……不気味……な感じが……。
……って。
……‼
もっ……もしかして……‼
もしかして、これは……‼
嵐の前の静けさ……⁉
不気味なくらい静まり返っているのは……っ。
そういうこと……⁉
きっと数秒後には。
恐ろしいくらいの悲鳴とブーイングの嵐がっ‼
『なんで芦達先生に、お姫様抱っこされているのよっ‼』って。
そんなっ……そんな恐ろしい声が聞こえてくるっ⁉
どっ……どっ……どうしよう……っ。
いっ……一体どうすれば……っ。