「……俺の……気持ち……」


 え……。


 飛鷹先生の気持ち……?


 やっぱり今の飛鷹先生、いつもと違う。

 さっきから一体何を言っているのか、全くわからない。


「本当は神城が卒業するまで待とうと思った。
 でも、やっぱり待つことができなかった」


 ……?

 卒業するまで待とうと……?

 でも待てなかった……?

 って、何を……?


 飛鷹先生が言えば言うほど。
 なにがなんだかわからないという迷路に迷い込んでしまう。

 そして、その迷路は。
 どんどん複雑になって。
 抜け出すことができない。


「もう……」


 え……?


「自分の気持ちを抑えることができない」


 飛鷹先生……?


「……神城」


 ……‼

 飛鷹先生……⁉


 飛鷹先生の大きな掌が。
 私の頬に近づき、やさしく触れた。

 その瞬間。
 心臓が勢い良く跳ねた。


「ずっと」


 え……?


「こうしたかった」


 飛鷹先生……。


 そう言った飛鷹先生の表情は。
 やさしさで溢れていた。

 そんな飛鷹先生のことを見ていると。
 包まれているような気持ちになった。
 飛鷹先生の優しさに。


「……嫌なら……」


 え……?


「……逃げてもいいよ」


 ……‼


「俺のことを振り払って」


 …………。


 ……そんな……。

 そんなことを言われても……。


 …………。

 飛鷹先生……。

 そんなことを言っているけれど……。

 今の飛鷹先生の表情は……。

 なんだか。
 少しだけど。
 悲しそうに見える……。


 ……ずるい……。

 ずるいよ、先生。

 そんな表情されたら……。


 …………。

 ……ううん。

 そんなことは関係ないのかもしれない。

 そういう表情をしなくても……。