「……だけの夕鶴」


 ……?

 隼理くん……?


「夕鶴たちのライブを楽しみにしている生徒たちがいるって……
 夕鶴はみんなの夕鶴じゃなくて俺だけの夕鶴なんだから」


 隼理くんはそう言うと。
 力を緩めていた腕に再び力を加え。
 私のことを抱きしめ直した。


「隼理くん……」


 隼理くんの腕の力。
 その力には。
 今の隼理くんの気持ちが込められている。
 そんな感じがした。


「それに……」


 ……?

 隼理くん?


「それに……?」


「……なんか憎い」


 え……。


「『ライブの打ち合わせは大事』って……
 憎い、ライブの打ち合わせが」


 隼理くん……。


「隼理く……」


 隼理くんの名前を呼びかけたとき。
 隼理くんがより強く私のことを抱きしめた。


「俺が夕鶴のことを一番大事と思っているように、
 夕鶴も俺のことを一番だと思ってほしい」


 隼理くん……。


「隼理くんのこと、すごく大事だと思ってるよ」


「……でも、ライブの打ち合わせも大事……なんだろ」


 ……隼理く~ん。


 私は隼理くんの言葉に少し困ってしまった。


「隼理くん……」


 私は少し困りながら隼理くんの名前を呼んだ。


「俺が夕鶴のことでいっぱいのように、
 夕鶴も俺のことでいっぱいになってほしい」


「いっぱいだよ。私も隼理くんのことでいっぱい」


「本当?」


「うん」


「じゃあ……」


「じゃあ……?」