「じゃあ、これなら大丈夫だろ」
それは、あっという間。
隼理くんのやさしい香りと温もり。
それらに包み込まれるように。
やさしく抱きしめられた。
『これなら大丈夫だろ』
隼理くんはそう言ったけれど。
私にとっては。
抱きしめられていることも。
かなりドキドキして。
顔だけではなく身体中に熱が帯びていく。
ただ、隼理くんが言ったように。
真っ赤になっている顔は見られずにすむ。
そう思いながら私も両手を隼理くんの背中にまわした。
「……暮らしたい」
しばらく抱きしめ合っていると。
突然、隼理くんがそう言った。
『暮らしたい』って……?
そう思っていると。
隼理くんは私からやさしく離れた。
私のことを見つめている隼理くんの顔がはっきりと見える。
隼理くんのやさしい眼差し。
そして瞳が。
あまりにも純粋で、そして美し過ぎて。
そのまま吸い込まれそうになる。
「俺、夕鶴と一緒に暮らしたい」
隼理くんの瞳に吸い込まれそうになっていると。
隼理くんは私のことを真っ直ぐ見つめたままそう言った。
「もちろん夕鶴のご両親からお許しをいただいてからということになるけど、
まずは夕鶴の気持ちが知りたい。
夕鶴の気持ちを教えてほしい」
『一緒に暮らしたい』
隼理くんにそう言ってもらえて、すごく嬉しい。
一緒に暮らしたい、隼理くんと。
そう思った。
ただ。
私は家族と離れて暮らしたことがない。
だから不安じゃないといえば噓になる。
だけど。
嬉しいという気持ち。
隼理くんと一緒に暮らしたいという気持ち。
それらの方が勝っている。
だから。
「私も隼理くんと一緒に暮らしたい」
隼理くんにそう伝えた。
「ありがとう、夕鶴。
夕鶴にそう言ってもらえて、すごく嬉しい」
やさしくて穏やかな隼理くんの笑顔。
そんな隼理くんの笑顔を見ると嬉しくなる。
だから私も自然に笑顔になる。
「私の方こそ、
ありがとう、隼理くん。
隼理くんに『一緒に暮らしたい』と言ってもらえて、すごく嬉しい」
「夕鶴」
隼理くんはやさしい声のトーンで私の名前を呼んだ。
そして、そのまま私のことを抱きしめた。