……って。

 えっ‼

 どうしようっ‼


 一刻も早く足を動かして。
 どうにかこの場を立ち去りたいと思っているのに。

 その生徒たちが。
 私の方に向かって歩き出している。


 早くこの場から逃げなくてはっ‼
 そう思えば思うほど。
 足だけではなく全身が金縛りにあったみたいに動かなくなってしまった。


 そんな状態に焦っている間に。
 五人の生徒たちが私の目の前に来てしまった。


 五人の生徒たち。
 目の前に来たら。
 より圧力を感じる。
 怖い顔が、より怖く見える。

 その顔を見たら。
 恐怖で声も出なくなりそう。


「……神城さん、少し話があるんだけど」


 そんなとき。
 五人の生徒たちの真ん中にいる生徒が真っ直ぐ私のことを見てそう言った。


「…………」


 やっぱり。

 恐怖のあまり声が出ない。


 声も出ない。
 身体も動かない。
 けれど。
 首だけは、なんとか動きそう。


 だから。
 ぎこちなくだけど、ゆっくりと頷いた。


「私たち、飛鷹先生のファンクラブの会員の者だけど」


 そうなんだ。

 隼理くんのファンクラブの……。


 だから私のことを怖い顔で見ているんだ。

 たぶん彼女たちは……。


「なぜ私たちが神城さんに話があるのか、わかるよね。
 今日の朝のこと」


 やっぱり。

 彼女たちも耳にしているよね。
 私と隼理くんが付き合っているのではないかという話。


「あれは本当なの?」


 ……本当なのか……。
 と訊かれても……。

 言えるわけがない。
 本当のことなんて……。

 私と隼理くんは恋人同士だなんて……。