「……できないよ……上手く……」


 そう言ったけれど。


「上手い下手じゃない。
 夕鶴にやってもらいたいだけ」


 やさしくそう言った隼理くんに。


「…………」


 ……これ以上。
 何も言えなかった。



 どうやればいいのか。
 隼理くんに教えてもらっても。
 正直なところ、よくわからない。

 だから。
 私なりのやり方で……。


 二の腕の内側。
 その場所はとてもやわらかい。
 だから。
 唇を密着させやすい。

 隼理くんに教えてもらった通り。
 まずは二の腕の内側を舌でやさしく滑らせる。

 まだそれだけしかしていないのに。
 隼理くんは。
 甘く艶のある声を出している。

 その声を聞いているだけで。
 私まで……。


 そして舌で滑らせた部分を。
 隙間なく唇を当て。
 そのまま強く、そしてやさしく吸い込む。

 その動作を繰り返しする。


 しばらくその動作を繰り返して。


「……これくらいで、いい?」


 唇を当てていた隼理くんの二の腕の内側から唇を離して。
 隼理くんにそう訊いた。


「ありがとう、夕鶴」


 隼理くんはやさしく微笑んで頭を撫でてくれた。


「……上手くできなかった」


 隼理くんの二の腕の内側にキスマークを付けようとする行動が。
 あまりにも恥ずかし過ぎて。
 なかなかそのことに集中できなかった。

 それに初めてすること。
 なにがなんだかわからないまま手探り状態だった。


 照明は暗いので。
 印がどのように付いているのか見えない。