一瞬、何が起こったのかわからなかった。

 あまりにも突然のことで。
 驚き過ぎて心臓がものすごい勢いで飛び跳ねた。


 なぜなら。

 私の後ろから。
 隼理くんの両腕が。
 スッと伸びてきて。
 私の腰のあたりに。

 そして、ぎゅっと巻き付くように絡められて。
 身動きが取れない状態になっているから。


 私の身体は、がっちりと固定されている。
 隼理くんの腕によって。


 やっぱり男の人だな。
 隼理くんの腕の力。
 とても力強い。

 だけど。
 それと同じくらい。
 やさしさも感じる。

 強くて優しい。
 そんな隼理くんに包み込まれているような。


 って。
 今はそのことに浸っている場合ではないっ。


「しゅっ……隼理くん、起こしちゃった?」


 早く起き上がって支度をしなければっ。


「……どこ行くの、夕鶴」


 寝起きだからか。
 隼理くんは少しぼーっとしたような声のトーンでそう言った。

 ……さすが隼理くん。
 ぼーっとしたような声のトーンでも色っぽさを感じる。


 って。
 そういえばっ。
 寝起きのわりには腕の力がすごいのではっ⁉

 本当に今の今まで眠っていたの⁉ と思うくらい。


 でも、眠っていたのは本当かな。

 ……だって……。

 そのとき微かに隼理くんの寝息が聞こえて……。


 って……。

 隼理くんの寝息を思い出しただけで……っ。

 すごくドキドキする……っ。


 って。

 違う、違うっ。

 今はドキドキしている場合ではなくて……っ。