これもまた。
 あまりにも突然のことで。


「……あの……亜南くん……?」


 亜南くんの名前を呼ぶだけで精一杯だった。


「大学にも行って経営のことも学ぶとなると、
 遥稀さんと一緒に過ごすことは難しくて」


 どんどん流れてくる言葉に。
 追いつけなくて。
 なかなか言葉が出てこない。


「……それに……」


 ……?


 それに……?


「これでいいんだと思います」


 これで、いい……?


「俺が進む道、
 遥稀さんが出した答え、
 それぞれ間違っていないと思います」


 私……。
 まだ何も言っていないのに……。


 もしかして……。
 気付いている……?
 私と聖志のことを……。


「あっ……あのっ、
 亜南くんっ、私……」


「付き合うことになったんでしょ、松尾さんと」


 やっぱり。

 気付いていた。
 亜南くんは。
 私と聖志が恋人同士になったということに。


 なんだか。
 すごく申し訳ない。
 そう思いながら小さく頷いた。


「遥稀さんが時間を作ってほしいと言ったのは、
 このことを言うためだったんですよね」


 すごい。
 すごく鋭い、亜南くん。


「……ごめんなさい……」


 出てこない。
 そんな言葉しか。


「謝らないでください」


 亜南くんはそう言ってくれても。


「だけど自分の気持ちがはっきりとしていれば……」


 亜南くんに少しでも誠実な態度をとることができたかもしれない。