「好きだよ、遥稀」


「好き、松尾」


「聖志」


「え……」


「『聖志』って呼んで」


 下の名前、で呼ぶ。
 松尾のことを……。


 それは……。

 恥ずかしい。

 今まで呼んだことがない。
 松尾のことを下の名前でなんて。


 だから。


「……また今度……」


 そう言ってみた。


「ダメ。
 今、呼んで」


 だけど。
 やっぱり、そういうわけにはいかないみたいで。


「呼んでくれないと……」


 松尾はそう言うと。
 呼吸ができないくらいの激しいキスを……。


 ……ダメ……。

 これ以上、続けると……。


「……呼ぶ気になった?」


 ほんの少しだけ唇を離した松尾が甘い声のトーンでそう言った。


 酸素不足になった私は、ほんの少しの隙間から必死に酸素を取り入れた。


「……イジワル……」


 呼吸を乱しながらそう言うと。


「どーも」


 松尾はイジワルな笑みを浮かべてそう言った。


 ……仕方がない。

 こうなったら……。