「それなら安心しました」


 やっぱり。

 俺と遥稀が同級生の関係だけだと再認識して安心したということは。

 政輝さんが遥稀のことを想う。
 その気持は確かなもの。


「実は僕、立候補したんです」


「立候補?」


「遥稀さんの恋人に」


 すでに。
 伝えていたんだ。
 政輝さんは遥稀に……。


「……よろしい、ですよね……?」


「え……?」


「松尾様と遥稀さんが同級生のみの関係でしたら、
 僕が遥稀さんの恋人に立候補し続けても」


「…………」


 言葉が。
 出てこない。


 政輝さんが、ここまではっきりと宣言……というか、言い切ったことに。
 驚きと動揺が激しく駆け回っている。


 ……動揺……?
 なぜ動揺なんか……。

 驚きはわかる。
 けれど動揺は……。


 …………。


 ……違う。
 そうじゃない。

 わかっている。
 本当は。

 なぜ動揺しているのか。


 というより。
 政輝さんにそう言われる前。
 十五年ぶりに偶然再会したとき。
 ……いや、もっと前から。

 ずっと。
 ずっとずっと。
 俺は……。