「聖志、待ってたぞ」


 霧島さんが笑顔でそう言った。


 まだ来ていなかった霧島さんが大学の頃からの友達。
 それは。
 松尾聖志―――。



「……遥稀……?」


 ……‼


 気付いた。
 松尾が。
 私に。


「聖志、知ってるのか?」


 霧島さんが松尾にそう訊いた。


「……小学生の頃からの同級生だよ」


 松尾の視線は。
 私に向いたまま。


「すごい偶然。
 なんか運命感じるな」


 私と松尾を交互に見ながら。
 霧島さんはそう言った。


 私も松尾も。
 霧島さんが言ったことに何も言えなかった。



 * * *


 合コンも中盤に入り。
 だいぶ盛り上がっている。



 そのとき。
 私は化粧室に。

 メイクを直すためというのもあるけれど。
 なんとなく。
 一人になりたかった。


 正直なところ。
 このまま帰りたい。

 会費も払ってあるし。
 このまま帰ったとしても何も問題はない。


【明日、朝早いから帰るね】
 仕事を理由に。
 愛依にそうメッセージを送ろうか。

 本当は。
 明日は昼から店に入ればいいから急いで帰る必要はない。


 ……でも……。
 帰りたい。
 今すぐにでも。

 だって……。
 戻れば。
 見ることになってしまう。

 ……松尾(あいつ)のことを……。



 戻りたくない。
 でも戻らなくては。
 そう思いながら化粧室を出た。


「……遥稀……」


 そのとき。
 私の目の前に……。