私が目を覚ましたのは、生まれたばかりの我が子、アルディス=レクスの死を悟ったときだ。侍女からの報告書に矛盾を見つけ、自ら調査した。周りの誰も信じられなかったからね。变化のと幻惑の術を駆使して、息子の寝室を訪れてみれば、そこが自動人形の工房と化してていた。あのときは心臓が止まりかけたよ。

 ルコットは何も知らぬ様子だった。隣にあるアルディス=レクスのための居館では、乳母マータに愛されてすくすくと育っている。そう信じ切っていた。
 そのとき私はクロイス公爵の真意を理解した。彼にとって、帝室とはクロイス家という名の宿り木が寄生するための、宿主に過ぎなかったんだ。自らの栄華のために、私達皇族や帝国そのものを利用していたのだ。

 だが、それに気づいた所で、私にはどうすることも出きなかった。周りには貴族派の顔ばかりが並び、常に監視されていった。私が貴族派の近臣を排除しようとすれば即座に殺され、いもしない息子レクスが、アルディス四世として即位するだけだ。

 だから一計を案じた。殺される前に死んだ。影武者として使用していた自動人形を調整し、変化の術の応用で偽装した。

 そしてそれを君に見破らせ、君に国を継いでもらおうと思ったんだ。私の理想を誰よりも理解しているのが君だったと、遅まきながら気がついたから。
 だから私は名前と姿を偽り、マルムゼという名の陰謀家として君に近づいた。そして、この国の実権を握る手助けをしようとしたのだが……結局、失敗してしまったな。最後に君を出し抜くことだけが出来なかった。