「君がシリンダーの内容を疑うことは目に見えていた。だから、わざと引っかる場所を作り、君に確認させようと思ったんだ。この村の名を刻んでいれば、すぐに目に留まると信じていたよ」
「そしてその場で暗殺未遂の狂言事件を起こし、ご自分の姿をした自動人形に大立ち回りをさせた。その様子を記者に書かせて、私にあなたの不在を確信させた。私はまんまとあなたの筋書きに踊らされました」

 アンナは、この地で起きた事件の記事を読み、うろたえたことを思い出して苦笑した。

「思えばおかしいことばかりでした。あのシリンダーは皇族が使う自動人形のもの。そしてマルムゼ殿は高度な変身魔法を使っていた。陛下の狂言と言っているようなものではないですか」
「はは……今思えば、少しずさんだった気もするな。何しろ時間がなかった。もう少し上手くやれていれば、君を革命政府の代表にすることが出来たのに……」
「実は、4人の容疑者の他に、もうひとり疑わしい人物がいたんです。あなたが化けていたマルムゼ殿にも話していませんでしたが」
「ほう。誰だいそれは?」

 黙って目の前にいる最愛の人を指差す。

「あなたが死を目前