「一緒に遊んでくれて、ありがとう。
 すごく楽しかった。
 じゃあね、バイバイ」


 どう言えばいいのか、頭の中がグルグルしていると。
 女の子は、ひまわりのような笑顔でそう言った。


「ぼくも楽しかった、ありがとう。
 じゃあね」


 寂しい、本当は。
 女の子と遊べなくなってしまうこと。

 もっと一緒にいたい。


 だけど、そんなことを言ったら、きっと女の子は困ってしまう。

 だから本当の気持ちは必死に胸の中にしまい込み俺も笑顔になる。


 そして女の子は俺に手を振った後、帰る方向へと歩き出した。

 だけど、もう一度、俺の方に振り返って手を振ってくれ、再び歩き出した。

 俺は女の子が歩いていくのを静かに見守っていた。



 あっ……‼
 しまった……‼
 あの子の名前を訊くのを忘れていた‼


 それに気付いた俺は、だいぶ遠くまで歩いて姿が小さくなった女の子のことを追いかけた。

 そのときに「ちょっと待って‼」と言ったけれど、俺のだいぶ前を歩いている女の子には聞こえていなかった。

 そして女の子は左の曲がり角を曲がった。

 それを見た俺は急いで曲がり角まで行った。

 そして俺も左の曲がり角を曲がった。

 だけど女の子は、どこにも見当たらなかった。