「きみも、ひまわりを見てたの?」
そのとき。
女の子は俺にそう訊いた。
女の子に声をかけられて少しだけ驚いた。
だけど、その気持ちをできるだけ抑えながら「うん」と返事をした。
「きれいだよね、ひまわり」
ひまわりのような笑顔。
そんな笑顔がよく似合う女の子。
「わたし、ひまわりを見ると、とても元気がでるの。
わたしの家の近くには、こういうところはないから」
……?
こういうところはない……?
家の近くに……?
あ、そうか。
この子は……。
「わたし、一昨日からおばあちゃんとおじいちゃんのところに遊びに来てるの。
わたしの家は、ここから遠くのところにあるの」
やっぱり。
女の子は、このあたりに住んでいる子ではなかった。
「あっ、そうだ」
突然、女の子は何かを思いついたように言った。
「今から一緒に遊ぼうよ」
女の子の、とびきりの笑顔。
「うん」
その笑顔につられるように俺も笑顔になった。
それから俺と女の子は、ひまわり畑の中に入り。
かくれんぼをしたり、少し疲れたら、ひまわりたちを眺めたりして過ごした。