「それに、その男の子の名前を聞きそびれちゃったから、誰かもわからない」


 それも俺と同じだ。

 それなら。
 いいんじゃないか。
『十年前のあの日の男の子は俺です』と言っても。


「東山陽太(ひなた)
 十年前のあの日に君と一緒に遊んだ男の子の名前。
 そして、その男の子は君の目の前にいる」


 俺の言葉を聞いて女の子は驚いていた。

 だけど、すぐにひまわりのような笑顔になった。


「嬉しい、やっと会えた」


 女の子はそう言って、もっともっとひまわりのような笑顔を見せた。


「俺も、やっと会えて嬉しいよ」


 やっと、やっと会えた……‼


「それから、少し縁を感じちゃう」


「縁?」


「うん。
 私の名前も『陽葵(ひなた)』だから。
 西宮陽葵っていうの」


「本当に⁉」


「うん」


「すごい‼ 本当に縁を感じるよ‼」


 名前も同じだなんて、すごく運命を感じる‼


 そのあと俺と陽葵ちゃんは連絡先を交換した。


 そして俺と陽葵ちゃんが恋人同士になったのは、それから一年後のことになる。


 ひまわり畑から始まった俺たち関係は、これからも静かにゆっくりと続いていく。





*end*