「あるよ」


「……‼」


「十年前のこの季節に」


「ほ……本当⁉」


「うん。
 毎年この季節に来るとは限らないけど、
 十年前はこの季節に来てるよ。
 それは、はっきりと覚えてる」


 やっぱり‼
 やっぱり、この女の子だ‼

 これで確信した‼
 この女の子は、十年前のあの日に一緒に遊んだ女の子だ‼


 だけど。
 それをどういうふうに言い出せばいいのか。

 いきなり『久しぶり‼』なんて言ったら、ドン引きされそうだし。



「十年前のあの日……」


 女の子に何て言えばいいのか。
 頭の中でグルグルと回っているとき。
 女の子が再び話し始めた。


「あの日は……私にとって大切な思い出だから」


 え……。

 大切な……思い出……?


「十年前のあの日、
 たった一度だけど、ある男の子と一緒に遊んだの。
 私は家族と一緒におばあちゃんとおじいちゃんの家に来ていたんだけど、
 その日に家に帰ることになっていたから、その男の子とはそれっきり。
 それ以降、その男の子とは会うことはできなかった」


 この女の子も十年前のあの日のことを大切な思い出だと思ってくれていた。

 そう思うと嬉しくてたまらなかった。