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「……それで、今度は被害者の関係者に事情聴取か。警察も大変だねぇ」
「それが仕事だからな」

 建設会社に警察が到着すると、真崎を置いてシグマは早瀬と現場に向かった。二十分ほど車を走らせて到着した現場の倉庫の入り口では、多くの警察関係者がシグマを面倒臭そうな眼で睨みつけてきた。
 シグマはそれを鼻で嗤って返すと、黙って中へ入っていった。倉庫内は薄暗く、遺体は既に運び出されていたが、酷い臭気が漂っていた。それに物怖じせず、シグマは遺体があった場所と照らし合わせるように、タブレットに表示された現場検証の写真を見比べる。

 被害者はうつ伏せの状態で倒れており、首元にうっすらと絞められた線が残っていた。おそらく犯人が被害者に馬乗りになり、後ろから首を絞めた可能性が高い。さらに見てみると、左手を機械の方へ伸ばして倒れている。右腕は脱臼しており、胴体に寄り添うようにピッタリとくっついていた。
 シグマはその中でも左手に注目した。人差し指の出血量が多く、その近くにはカメラのフラッシュで反射した、細かい破片が散らばっている。早瀬に伝えると、鑑識が確認している最中とのことだった。
 画面から目を離し、今度は実際に倉庫内を見渡した。鍵は劣化して誰でも簡単に壊すことができ、防犯カメラは設置されていない。――つまり、誰でも立ち入りが可能で、遺体を放置することもできた。この倉庫に人が訪れることも少ない以上、現段階で犯人特定は困難だった。
 ふと、遺体の左手に伸ばした先にある機械に目を向けると、下の方に赤褐色の不自然な線が見えた。シグマがしゃがんでスマートフォンで撮影すると、そこには何かの文字が書かれていた。