にやりと笑みを浮かべたシグマに、若菜は苦い顔をして彼を睨んだ。この二人が居なければ、自分がこんな目になることはなかったかもしれないと思うと、悔しくて仕方がない。それを察したのか、シグマは紙袋から一枚のデザインが書かれた資料を取り出した。
「これ、数週間前に旗本が権藤に渡した企画書の中に混ざってたデザイン。アンタが書いたやつでしょ?」
「……いつの間にか無くなっていたんです。そしたら、旗本さんの名前で全く同じものが企画書の中に入っていました。でも、自分のだって言える証拠もなくて……」
「それが、アンタが知りたがってた上司を殺す動機だよ。思っていた以上に簡単に見つかったろ?」
「…………私、デザインなんかどうでもいいんです」
旗本の指導は厳しかったが、若菜は彼女を誰よりも尊敬していた。仕事もプライベートも隙のない彼女の生き方が、若菜にとって理想だったのだ。しかし、自分の書いたデザインが旗本に盗まれたと知って、若菜の中で何かが崩れていく音がした。
「旗本さんをずっと信頼していました。だからデザインが使われたという事実よりも、卑劣なことをしたことに腹が立ちました。本当に尊敬していたんです……っ!」
「だったら、そう言えばよかったじゃん」
座ったままの若菜の顔を覗き込むように、シグマは真っ直ぐ目を合わせた。
「いくら上司だからだって、間違った道に進もうとしている人間がいるなら止めるべきだった。自分がもっと上の人間になればよかった。……殺す以外に方法はいくらでもあったんだよ」
「あなたに何がわかるんですか! 辛い仕事も全部、旗本さんがいたから頑張ってきたんです! ……私は裏切られたんです」
シグマは紙袋から企画書と権藤の家から見つかったタータンチェックのマフラーを取り出して、テーブルの上に並べる。そして、企画書を捲ってとあるページを開いて見せた。
「これ、数週間前に旗本が権藤に渡した企画書の中に混ざってたデザイン。アンタが書いたやつでしょ?」
「……いつの間にか無くなっていたんです。そしたら、旗本さんの名前で全く同じものが企画書の中に入っていました。でも、自分のだって言える証拠もなくて……」
「それが、アンタが知りたがってた上司を殺す動機だよ。思っていた以上に簡単に見つかったろ?」
「…………私、デザインなんかどうでもいいんです」
旗本の指導は厳しかったが、若菜は彼女を誰よりも尊敬していた。仕事もプライベートも隙のない彼女の生き方が、若菜にとって理想だったのだ。しかし、自分の書いたデザインが旗本に盗まれたと知って、若菜の中で何かが崩れていく音がした。
「旗本さんをずっと信頼していました。だからデザインが使われたという事実よりも、卑劣なことをしたことに腹が立ちました。本当に尊敬していたんです……っ!」
「だったら、そう言えばよかったじゃん」
座ったままの若菜の顔を覗き込むように、シグマは真っ直ぐ目を合わせた。
「いくら上司だからだって、間違った道に進もうとしている人間がいるなら止めるべきだった。自分がもっと上の人間になればよかった。……殺す以外に方法はいくらでもあったんだよ」
「あなたに何がわかるんですか! 辛い仕事も全部、旗本さんがいたから頑張ってきたんです! ……私は裏切られたんです」
シグマは紙袋から企画書と権藤の家から見つかったタータンチェックのマフラーを取り出して、テーブルの上に並べる。そして、企画書を捲ってとあるページを開いて見せた。