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 真崎大翔は数か月前、大きな事故に遭ったことがきっかけで記憶を失った。
 何も思い出せない、もどかしい状況ながらも社会に戻ろうとしたが、勤めていた会社が倒産し、不運の連続に見舞われた。そんな真崎に手を差し伸べたのがシグマだったのだ。
 彼曰く、真崎が彼に依頼したことがきっかけで仲良くなったというが、実際のところ定かではない。しかし、彼の言う言葉一つ一つがやけに懐かしく、しっくりくることに不思議と違和感がなかった。かなり突飛な方法だが、記憶を取り戻すために手を組むことにしたのだという。
 勿論信頼はしているが、シグマのことを少しも疑っていないのかと言われたら嘘になる。それでも共に行動しているのは、今までの彼の行動や言動に共感したことだけは間違いはない。

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「なんか……素敵な関係ですね」
「そうでしょうか。お互い、利用しているだけですよ」
「それでも支えあって今までやってきたんでしょう? 私は素敵だと思います」

 若菜は微笑んで断言するにつられて、真崎は小さく笑う。すると、ポケットに入っていたスマートフォンが鳴り響いた。相手はシグマからで、現場検証を一通り終え、捜査本部へ向かうという。カレンダーの他に旗本のデスクから気になるものもなく、真崎は若菜と共に刑事の車で会社を出た。