スッとした、控えめな目もとと奥ゆかしい顔立ちとは裏腹に、的場は少々からかい好きのようだった。
 
 食べ終えた弁当箱を抱えて、席を立つ。「あ、図書室?」と声をかける舞衣を無視して、保険医二人に頭だけ下げると、翠はバタンと扉を閉めた。

 教室に戻り、他人の笑い声であふれた中にある自分の机に行き、鞄に弁当箱をしまって、南の階段へ向かうと、舞衣が先に待っていた。

「図書室でしょ?」

 舞衣は当然のように翠の行きたい場所を言い当てた。

「……神出鬼没かよ、お前」
「先輩に向かってお前呼ばわりしない!」

 また無視してスタスタと階段を上ると、舞衣はさっと駆け上がって翠の前をずんずん進んだ。相変わらず自分が主導権を握りたがる女の子だ、と翠はあきれ気味に思った。

「図書室が地下じゃなくて上にあるっていいよね。やっぱりお日様の光、浴びたいし」
「ふーん」
「三階なのもポイント高いなあ。上過ぎず下過ぎず。窓見るとちょうど空と地面が絶妙なバランスでさ」
「確かに景色はいい。落ち着く」