「でもあんた、『かまってちゃん』でしょ」
「はあ!? ちげーよ! どこがだよ!」

 翠が顔を真っ赤にして怒ると、舞衣が、

「だって、あんたは何か言いたいことがあると、後ろからじっと見つめるじゃない。熱い視線を」とおもしろそうに言った。

「いつ俺がそんな女々しいことしたよ!?」
「……自覚ないのかよ」

 今度はあきれたように溜め息を吐く舞衣に、ああ、全然勝てない、と翠は思った。いつだって彼女のほうが一枚上手だ。悔しいような心地いいような、ぼやけた感覚に揺られる。

「仲いいわねえ、あなたたち」

 年配の保険医がほんわりと言った。もう一人の保険医も、ニコニコと微笑ましそうに見ている。

「そりゃあ、こいつ、かわいいですからねえ」

 舞衣がしれっと言い放ったので、翠は口にしていた売店の麦茶を吹き出しそうになった。

「ねえ、的場、この子かわいいよね」
「うん。弄りがいがあるわ」

 舞衣と的場がクスクス笑い合って、翠は次に口にする暴言を考えていたが、沸騰した頭は見当はずれの台詞しか出てこず、わなわなと震えるばかりだった。