彼女はボランティア部ではなかったが、しょっちゅう部室に遊びに来ていた。「お前、暇人かよ」と投げかける夏央に、「どこの部も入ってないもん」とからかうように返す彼女は、いつでも楽しそうで、親しみ深い雰囲気があった。
 
 そしていつも周りに人がいた。取り巻きというほど熱狂的なファンではなくて、友達という言葉がピッタリな関係の仲間が。
 
 舞衣は時々友達を連れてきたりもした。その一人が的場である。的場は比較的おとなしい女子で、あまり多くを語らない人だった。舞衣の後ろをついて歩いて、適度に盛り上がった現場を崩さないような引き際を知っている者だった。「そろそろ戻ろうか」と的場が言うと、舞衣も素直に従った。この二人の関係が理想だった。
 
 ご飯をすべてたいらげて弁当箱をしまうと、チラッと舞衣を見た。
 的場と何やら話し込んでいる。委員の話だろうか。それとも何気ない会話だろうか。翠はテーブルから二人の姿をじっと見つめていた。
 
「ん、どうした、翠? 寂しいのか?」

 舞衣が気づいて、椅子の背もたれから振り向いた。

「馬鹿か。俺はちびっ子じゃねえよ」