じゃあ、お前たちは? お前たちは何をもって、自分たちを普通の人間だと思い込んでいるのか。いつ俺たちが「普通以下」の人間だと区別したんだ。デイケア組のことを知りもしないで、よく面と向かって自分たちは優しい人間ですと言えるな。

 喉元まで出かかった言葉を、ぐっと飲み込み、何かに熱く燃えたぎっている心臓の鼓動を感じながら、翠は保健室の扉を開けた。
 
 保険医がすぐに来て、
「青花君ね。そこに座って」と的確な指示を出した。

「保健係さん、いつもありがとう」と若い保険医が笑いかけると、男子生徒二人は照れたように頭を掻いて、「じゃあ、またな」と去っていった。

 大人の前で、まるで友達のように振るまった二人に、軽く殺意を抱きながら、翠は指定された奥のベッドにドサッと倒れ込んだ。

「まずは水を飲みなさい、水を」と年配の保険医が、小さな冷蔵庫から水を取り出し、コップに注いで翠の前に持ってきてくれた。だるく身体を起こして水を飲み干す。

「二時限目は、ここで休みなさい。私、あなたの制服持ってくるから」と年配の保険医がカーテンを閉め、早足に保健室を出た。