「青花、やっぱりデイケア組に戻ったほうがいいよ」

 扉をノックする間際、普段は温和な性格で知られている、控えめな顔立ちの男子が、つぶやいた。

「それ、喘息だろ? 今日だけじゃなくて、普通の授業でもしょっちゅう発作起こしてるじゃん。
 俺はよく知らないけど、喘息って、深刻なやつって聞いたよ。
 お前の場合はまさか死にはしないだろうけど、やっぱりさ、無理だよ。ハンデを抱えた人が、その、普通の人と一緒に……ていうのは、まだ難しいんだと思う」

 男子生徒は丁寧に、それとなく言葉を濁して言った。左側についている、だいぶ背の高い男子のほうも、黙って相方の話を聞いている。そして同意するようにうなずく。

「せめて体育だけでも休んだら?」

 男子生徒は気遣うように声色を変えた。

「……普通学級に、体育は必須科目だろ」

 翠は苦しく息を吐きながら、言葉尻を強めた。

「でも、身体の弱い人は大体が見学しているよ」
「俺はそんなやつらと一緒のカテゴリーに分けられたくない」

 男子生徒はあきれたように溜め息を吐いた。

「お前は普通の人間じゃないじゃん」