佳純としっかり目を合わせ、「そうか。がんばってね。大変だろうけど」と笑みを浮かべた。
 その微笑を見て、彼女も兄と同じく、とても美しい少女なのだということを、佳純は思い知った。

 なんてきれいなのだろう。

 ふいに泣きたくなった。勝手に進路先を変えたのに、何一つ相談すらしなかったのに、彼女はすべてを受け入れていた。
 夕莉に涙を見せたくなくて、顔をそらした。
 それきり二人は黙った。しばらく肩を並べてゆっくり歩いていると、夕莉がぽつりと言った。
 
「実はあの本、途中の内容を飛ばして、最後の結末読んじゃった」

 彼女は「へへへ」と笑った。佳純がポカンとしていると、夕莉は悪戯っぽく肩を小突いた。

「好きなら後悔しないように勇気出しなよー」
「あ、あの、話の内容はどうだったの?」

 佳純がたじろぎながら訊くと、夕莉は「ああ」と朗らかな笑みで話した。

「ストーリーはね、冒頭部分で主人公と大の仲良しだった一つ上のお兄さんが死んじゃって、その人の葬式のシーンから始まるの。