居間のソファーに体育座りの姿勢で足を抱え、テレビに映る明日の天気を見た。曇り時々晴れ。秋雨前線の通過する時期の中で、久しぶりに晴れ間がのぞくのかと思考に耽りながら、聡子の夕飯の手伝いをした。
 聡子は手際よくキャベツを千切りにしている。佳純は味噌を研いで三人分の具材を取り分けた。
「もうご飯ね」と、聡子がカツを揚げて皿の上に手際よく乗せ、千切りにしたキャベツをさっと乗せた。佳純がそれを持っていき、その時にちょうど稔もやって来て、聡子が味噌汁を盛り分け、食食卓に運んだ。
 夕飯の準備が整い、皆で「いただきます」とご飯に手をつけた。
 
 何度この幸せな瞬間を経験しても、あの時、兄に抱えられて見上げた夕空の美しさは、忘れられなかった。自分の居場所は、どこなのか。佳純はまだわかりかねていた。

   ○

「おはよう」

 夕莉に声をかけられて、自分がぼうっとしていたことに気づいた。
 朝の読書時間がもうすぐ始まる時だった。ギリギリに着いた夕莉を見て、「おはよう。今日は遅いね」と笑顔で返した。「うん、ちょっとね」と言う夕莉の顔は、どこか嬉しそうだった。