夏央たちの学年は修学旅行があったが、九州地方に三泊四日で出かけるだけだと、特に何の感慨もなく言い切った夏央と冬華は、今ちょうどその時期で、学校を留守にしている。
文化祭のすぐあとだと、気持ちの切り替えが大変だろうな、と佳純は思いながら、もう一つの重要事項をいつ彼女に伝えようか、考えていた。
私があそこを出て行ったら、夕莉は一人ぼっちになる。
彼女の涙に濡れた顔を想像した。驚くほどすぐにその映像が頭に浮かび上がってきて、つまりそれほど、夕莉はよく泣いているということだろう。
あの子は、本当に笑わない子だ。
夕莉のことを思うと、胸がズキリと痛む。捨て犬を腕に抱いた時のような、悲しくて見捨てられない気持ちになる。
それでも佳純は知っていた。自分は彼女を置いていくと。
そして初恋の人と同じ環境に飛び込むと。
夕莉の情は重すぎる。がんじがらめになった愛だ。しかし自分も似たような人間なので、彼女を批判することはできなかった。
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文化祭のすぐあとだと、気持ちの切り替えが大変だろうな、と佳純は思いながら、もう一つの重要事項をいつ彼女に伝えようか、考えていた。
私があそこを出て行ったら、夕莉は一人ぼっちになる。
彼女の涙に濡れた顔を想像した。驚くほどすぐにその映像が頭に浮かび上がってきて、つまりそれほど、夕莉はよく泣いているということだろう。
あの子は、本当に笑わない子だ。
夕莉のことを思うと、胸がズキリと痛む。捨て犬を腕に抱いた時のような、悲しくて見捨てられない気持ちになる。
それでも佳純は知っていた。自分は彼女を置いていくと。
そして初恋の人と同じ環境に飛び込むと。
夕莉の情は重すぎる。がんじがらめになった愛だ。しかし自分も似たような人間なので、彼女を批判することはできなかった。
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