「いいよ。もともとは私が言い出しっぺだから。……もう外、暗いね。帰ろうか」
「うん」

 佳純と夕莉はそっとベンチから立って、そろそろとグラウンドを後にした。先に帰るという旨を夏央と冬華にメールで伝え、今日はいろいろとご迷惑おかけしました、という文章を添えて送信すると、二人はゆっくりと帰り道を歩いた。

「頭痛は治まった?」
「うん、だいぶ」

 先ほど倒れた夕莉は、頭に手をやりながらも、気丈に答えた。

「ありがとうね。つらい過去のこと話してくれて」

 夕莉は礼を述べると、髪をまとめていたバレッタを外して、手ぐしで広げた。佳純も縛っていた髪をほどく。いつもの自分に戻ると、今日一日の疲れがどっと出た。

「私のお兄ちゃん、何も言わないから。いつも私に黙って何でも決めちゃう」

 夕莉は少し笑いながら、とっぷりと夜の満ちた空を見上げて歩いた。

「きっと、兄と妹っていうのは、荷が重すぎる関係なんだよね」

 夕莉がその台詞を言うと、それはとても説得力のある言葉に思えた。佳純は夕莉に寄り添って、バス停とモノレール線に分かれる駅の入り口まで進んだ。

「ヒント、見つかりそう?」