この中に一人、自分を窓から落とした兄がいる。その真実は針のようにプツリと佳純の肌を刺しては痛んだが、知りたくもないことは知らないままのほうがいいと、佳純は自分自身に言い聞かせていた。
このままの関係を維持したいと、切に思った。
時々、ひどく鬱屈とした気持ちになる心を、抱えながら。
○
グラウンドではしゃぐ生徒たちを遠目に見つめながら、佳純は夕莉に、過去のことを話し終えた。
夕莉はじっと耳を傾けていた。時折、相槌を打ちながら、佳純の紡ぐ言葉に聞き入っていた。
「あ、夏央先輩と冬華先輩のクラス、賞取ったみたいだね」
佳純がふと話題を変えると、夕莉も視線を移した。遠くで夏央がクラスメイトと熱い抱擁を交わしていた。冬華のほうはクラスの女子たちと手を取り合って喜んでいた。
「青春って感じだなあ」
夕莉が溜め息交じりにつぶやいた。その声の調子に、羨ましがっているような感情を佳純は感じ取ると、「私たちも青春したじゃん」と返した。
「うん、まあ、午後しか参加できなかったけど。……ごめんね、あんなに取り乱しちゃって」
このままの関係を維持したいと、切に思った。
時々、ひどく鬱屈とした気持ちになる心を、抱えながら。
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グラウンドではしゃぐ生徒たちを遠目に見つめながら、佳純は夕莉に、過去のことを話し終えた。
夕莉はじっと耳を傾けていた。時折、相槌を打ちながら、佳純の紡ぐ言葉に聞き入っていた。
「あ、夏央先輩と冬華先輩のクラス、賞取ったみたいだね」
佳純がふと話題を変えると、夕莉も視線を移した。遠くで夏央がクラスメイトと熱い抱擁を交わしていた。冬華のほうはクラスの女子たちと手を取り合って喜んでいた。
「青春って感じだなあ」
夕莉が溜め息交じりにつぶやいた。その声の調子に、羨ましがっているような感情を佳純は感じ取ると、「私たちも青春したじゃん」と返した。
「うん、まあ、午後しか参加できなかったけど。……ごめんね、あんなに取り乱しちゃって」