夕莉を空いていたベッドに運びながら、夏央と冬華も観念したようにソファーに腰かけると、佳純に事情を話し出した。

 翠と飯塚舞衣が初めて出会ったのは、ボランティア部がデイケア組に接触した頃だった。

 翠はその時、夕莉に付きっきりで登下校していた。夕莉に気づかれないうちに一般クラスに接触するのは、昼休みの時しかなかった。翠はその時間を有効的に活用して、昼の活動をしているボランティア部に、たびたび会いに行っていた。

 飯塚舞衣は、夏央と冬華の腐れ縁だった。

 彼女は保健委員会の副委員長で、昼休み時間に、週に二回、保健室に滞在していた。

 夕莉と面識がないのは、昼休みは佳純と一緒に弁当を広げているからだろう。
 
 翠はその間、夏央たちのところに行き、彼らを通して舞衣と知り合った。
 
 次第に翠は彼女と仲良くなった。
 
 その時から、彼の妹離れは始まっていたのだろう。なぜ急に夕莉を拒絶するようになったのかは理由が掴めないが、翠は「外」の世界に憧れを抱き始めた。