「ああ、久しぶりです。すみません、ずっと忙しくて……」

 翠は夏央を見るとほっとしたように笑顔を浮かべた。「冬華先輩も久しぶりですね」と言いながらベッドから下りて、二人に歩み寄ろうとした。

 その時、夏央と冬華の陰に隠れていた夕莉が、ひょこ、と顔を出した。

 佳純も続けて翠の前に姿を見せたが、彼は自分には目もくれていなかった。
 
 妹の姿を見て、時が止まったかのように硬直していた。
 
 そして見る見るうちに、その冷たい美貌が殺気を漂わせた。
 
「お兄ちゃん」

 夕莉はそのことに気がついていないようだった。

「久しぶり。身体は大丈夫?」

 当然のように兄を気遣った妹に、翠は、突き刺すような鋭い視線を向けた。

「何でここがわかった」

 押し殺したような声に何かを感じ取ったのか、夕莉がおびえたようにビクッとした。

「一般クラスに移ってから、ずっと体調悪いって聞いて、お兄ちゃんのクラスの出し物に皆で行ったんだけど、いなくて、保健室にいるって言われたから」

 たどたどしく説明する夕莉に、翠はこれ以上ないほど殺気じみた瞳で、がなった。

「出て行けよ」