夕莉が思い出したようにはっと息を飲んだ。佳純はポンと彼女の肩に手をやって、「皆なら、翠君も懐かしがってくれると思うよ」と諭すように言った。

「そうだな。じゃあ、行ってみるか」

 夏央がさっと席を立った。

「考えてみれば、あの子、ずっと一人で戦っているしね。どうしていきなり夕莉と離れたのか、今なら訊けるかもしれないし」

 冬華も立ち上がって、にっこりと佳純たちに微笑んだ。

「翠君のクラス知ってる?」
「多分、二組。先生から聞いた」

 佳純の問いに、夕莉は自信なさげに答えた。

「あいつ、本当に何も言ってないんだな。しょうがねえなあ」

 夏央があきれたように溜め息を一つ吐いた。

「一年生は、ほとんど展示会だから、翠君がクラスにいるかどうかはわからないわね。友達と遊んじゃっているかも」
 
 冬華が持っていたパンフレットを取って、推測するように告げた。
 
 佳純は夕莉の背中をそっと押して促した。夕莉が覚悟を決めたように歩き出すと、ほかの三人もついていった。