冬華が夏央に合図をして、二人はスタスタと歩いていった。佳純と夕莉もついていく。二人の間にそれほど深い沈黙はなかった。適当に入っただけなのかもしれない。しかし二人の優しさは中途半端な気持ちでできるものではないと、佳純も夕莉もわかっていた。

 一階のホールに出た。窓辺に沿う形で並んでいる長椅子に佳純たちは座り、たくさんの人で行きかっている駅の入り口のようなホール前を眺めた。二人は夏央たちの言葉を待っていた。

「俺たち、小学校時代は学級委員だったんだ」
「高学年になった時からずっとね」

 夏央と冬華が順に告げた。

「面倒見いいですからね」

 佳純がそう言うと、夕莉も続けてうなずいた。

「それでまあ、ずっと委員長ってポジションだったんだけどさ、どこのクラスにも、必ず一人は身体弱いやつがいるわけ。その中でも特に病弱な男子がいたんだ。
 そいつはちょっと荒んでいて、危なっかしい雰囲気で、世話好きな俺たちは見事に、そいつにかかりっきりになっちゃったわけよ」
 
 夏央が少しおどけたように笑うと、冬華が続きを話した。